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福岡高等裁判所 昭和29年(う)1385号 判決

控訴人 原審検察官

被告人 桐村安男こと李起栄 外三二名

弁護人 松井佐 外二名

検察官 安田道直

主文

被告人金寿興、同劉宗植、同呉大俊、同韓昌世、同朴栄徳、同李南伊、同趙東圭、同金英洙、同李成業、同金順南、同朴栄培、同金日泰、同丁殷燮、同河順千の各控訴を棄却する。

原判決中被告人金基昊、同梁在義、同陳祥鳳、同金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連、同金鳳洙、同張翊相、同白南植、同李起栄、同尹一模、同呉元錫、同張白樹、同李金水、同鄭孟祚、同李霽雨、同徐潤守、同鄭在湖、同金晩昌に関する部分(但し被告人陳祥鳳、同尹一模、同呉元錫については有罪部分のみ)を破棄する。

被告人金基昊を懲役五年に、

同陳祥鳳を懲役四年に、

同金鐘讚、同金鐘寿を各懲役二年六月に、

同梁在義、同呉元錫、同尹一模、同李起栄、同鄭在湖、同金晩昌を各懲役二年に、

同張白樹、同李金水、同金乙連、同鄭孟祚、同李霽雨、を各懲役一年六月に、

同徐潤守を懲役一年に、

同金鳳洙、同張翊相、同白南植を各懲役十月に、

処する。

原審の未決勾留日数中、

被告人金基昊に対しては四百日を、

同陳祥鳳に対しては二百日を、

同金鐘讚に対しては五百五十日を、

同金鐘寿に対しては三百日を、

同梁在義に対しては百日を、

同呉元錫に対しては百日を、

同尹一模に対しては三百日を、

同鄭孟祚に対しては二百日を、

同李霽雨に対しては百五十日を、

同徐潤守に対しては二百十日を、

同白南植に対しては右刑期に満つる迄の日数を、

各その本刑に算入する。

但し被告人金鐘寿、同梁在義、同呉元錫、同尹一模、同李起栄、同張白樹、同李金水、同金乙連、同鄭孟祚、同鄭霽雨、同鄭在湖、同金晩昌、同徐潤守、同張翊相、同金鳳洙に対しては何れも本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告人徐潤守を保護観察に附する。

(中略)

本件公訴事実中、

被告人陳祥鳳が昭和二十七年六月二十七日同人方及び申点竜方で行われた暴力行為等処罰に関する法律違反・不法監禁・強要等の各犯罪事実につき共犯関係にあつたとの点(即ち同人に対する昭和二十七年十月十一日附起訴状記載の第一の事実)、

被告人白南植が同日夜から翌二十八日に亘り李珍雨方で行われた前同様の各犯罪事実につき共犯関係にあつたとの点(即ち同人に対する起訴状記載の第二の事実)、

被告人梁在義、同李金水、同鄭在湖、同金晩昌が同年六月三十日午前三時頃民団若松支部長金応[王賛]方同支部顧問李弘洙方及び若松市警察署土居町巡査部長派出所において行われた放火未遂、器物損壊、爆発物取締罰則違反、住居侵入、脅迫等の各犯罪事実につき共犯関係にあつたとの点(即ち同人等に対する各起訴状記載の第二の(一)(二)(三)の各事実)、

について、右被告人等は何れも無罪。

理由

本件控訴趣意は、被告人等全部の弁護人松井佐及び諫田博、被告人呉元錫、同金寿興、同劉宗植、同張翊相、同徐潤守、同李起栄、同鄭孟祚、同韓昌世の弁護人今長高雄、並びに被告人金基昊、同梁在義、同陳祥鳳、同金鐘寿、同金鐘讚、同白南植、同李金水、同李霽雨、同尹一模、同鄭孟祚各提出にかかる各控訴趣意書記載のとおりであるから、之を引用し、右に対し当裁判所は次の様に判断する。

弁護人諫山博の控訴趣意第七点の論旨について。

原判決が多数の裁判官の証人尋問調書や検察官作成の供述調書を事実認定の証拠に供していることは所論のとおりであるけれども、右は何れも公開の法廷において適式な取調を経たものであるから、原審裁判官がその自由な心証により之を証拠として採用したのは固より適法であつて、所論の様に公判中心主義弁論主義裁判公開の原則等に違反した不法の措置と言うことはできない。又刑事訴訟法第三百二十五条が「裁判所は、前四条の規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載された供述又は公判準備若しくは公判期日における供述の内容となつた他の者の供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければ、これを証拠とすることができない」旨規定していること及び原審各公判調書に原裁判所が各証人尋問調書或は供述調書等の取調を為すに先立ち之等の書面に記載されている供述の任意性につき特段の証拠調その他の調査をした旨の記載がないことは所論のとおりであるけれども、右記載がないことの故を以て直ちに原裁判所が任意性の調査をしなかつたものとは断じ難いのみならず、いわゆる陪審制度を採つていないわが現行刑事訴訟法の立前から言つて、その調査の方法については供述調書若しくは供述自体の形式内容を検討し或は事前たると事後たるとを問わず他の機会にその供述者若しくは調書作成者に就き為された取調の結果と比照する等裁判所が適当と認める方法によることができ、且その調査の時期についても必らずしも証拠調の事前においてこれを行うことを要せずその証拠調を為すに際り或はその後の訴訟手続進行の過程において若しくはいよいよ判決を為すに際りこれを行つても結局において差支えないものと解されるところ、本件記録について調査するのに、原裁判所が証拠に採用している裁判官の各尋問書即ち裁判官の面前における供述を録取した書面については当該書面及び記載されている供述自体の形式内容に照らし容易に右供述の任意性を肯認することができるし、又検察官に対する各供述調書即ち検察官の面前における供述を録取した書面についても多くは事前若しくは事後に裁判所が直接その供述者を取り調べて居り尚そうでないものもその供述者に対する裁判官の尋問調書を取り調べて居り右各取調の結果と比べ或は当該書面及び記載されている供述自体の形式内容に照らしその任意性を看取することができるので、原裁判所も亦所論の各書面につき証拠調を為すに際り前記の如く事前他の機会に取り調べた証拠と対比し若しくはその形式内容を検討し、或はその後の訴訟手続進行の過程において若しくは判決を為すに際り前記の如く事後他の機会に取り調べた証拠と対比する等の方法により調査を遂げた上、何れも任意性があるものとしてその証拠能力を認めた趣旨であることを窺い知ることができるものと言うべく、従つて原審の訴訟手続を以て所論の様に刑事訴訟法第三百二十五条の法意を蹂躪し延いて判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるものと為すことはできない。さらに、記録について調査するのに、原裁判所が事実認定の資に供した各参考人或は共同被告人の検察官に対する各供述調書に記載されている供述は、何れも同人等の公判準備若しくは公判期日における供述と全面的或は部分的に相反し若しくは実質的に異るものであるところ、本件被告人等は何れも公判廷において各その公訴事実の全部或は一部を否認し極力之を争つて居り斯る被告人等多数を面前に控えた公判廷においては証人或は共同被告人の供述も心裡的な圧迫を蒙つて卒直を欠く憾があることも蓋し止むを得ない所と認められ、それよりも寧ろ時間的にも事件に近接し記憶も比較的新たな時期において検察官の面前で上叙の様な心裡的圧迫もなく卒直に為された供述の方が之を信用すべき特別の情況を具備するものと言うべく、而して原審における関係各公判調書の記載により明らかなとおり原裁判所が検察官に対する各供述調書につき証拠決定を為し之が取調を行つている事跡に徴すれば、原裁判所は右各供述調書がその証拠能力に関する法定の要件即ち刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号但書にいわゆる特別の情況を具備するか否かについても調査の上右情況を具備するものと認めて之を証拠に採用した趣旨であると解するのが相当であるから、原裁判所が之等の供述調書につき右特別の情況の存否に関する調査もせず又右情況を具備しないのに拘らず之を証拠に採用した旨主張する所論には与し難い。(尚所論引用の昭和二十四年十二月七日広島高等裁判所岡山支部の判決も本件に適切でない。)然らば、右第七点の論旨は何れもその理由がないから、之を採用することができない。

同控訴趣意第一点第三点及び弁護人松井佐の控訴趣意第一点中何れも被告人呉元錫同金寿興、同劉宗植、同尹一模、同李南伊、同呉大俊、同韓昌世、同朴栄徳、同趙東圭、同金英洙、同李成業、同金順南、同朴栄培、同金日泰、同丁殷燮、同河順千、同李霽雨、同鄭孟祚、同徐潤守に関する事実誤認の論旨、並びに弁護人今長高雄の被告人呉元錫、同金寿興、同劉宗植、同徐潤守に関する各控訴趣意第一点即ち事実誤認の論旨について。

原判決挙示の関係各証拠を綜合すれば、右掲記の被告人十九名に関する原判示第二(但し被告人河順千に関しては原判示第一 以下同様)の犯罪事実を認定するのに十分である。就中、被告人呉元錫、同尹一模、同金寿興、同劉宗植、同李南伊が原判示第二の犯行に参加した点については、証人伊東美代子に対する裁判所の各尋問調書(記録第四十一冊一六二丁以下二二三丁以下)同李同心に対する受命裁判官及び裁判官の各尋問調書(同冊二三五丁以下及び同第五十一冊)同呉炳旭に対する裁判官の尋問調書(同第五十一冊)姜永達の検察官に対する第三回供述調書(同第五十三冊)朴栄培の検察官に対する第四回供述調書(同第五十四冊)の各供述記載等に徴しその証明十分であつて、尚時刻の点に関する所論につき検討しても右被告人呉元錫外四名が本件第二の犯行に絶対的に間に合い得なかつたものとは断じ難い。又被告人李霽雨及び同徐潤守が同犯行に参加した点は、証人呉炳旭に対する裁判官の尋問調書(同第五十一冊)伊東美代子の検察官に対する第三回供述調書(同冊)原審共同被告人石啓鳳の検察官に対する第五回供述調書(同第五十三冊)共同被告人金鐘讚の検察官山本義春に対する第一回供述調書(同第五十五冊)等に徴し之亦証明できる所であつて、右に反する各証拠は俄かに措信し難い。さらに、原判決挙示の関係各証拠によれば、前掲記の被告人十九名の内自ら直接原判示第二の犯行を分担実行しなかつた者があるとしても、同人等は何れも原判示の様に竹槍棍棒等を携えた約二百名の集団が統率者の指揮により民団派の機先を制して同派の人々に攻撃を加えるべく隊伍を組んで進発するに際つて既に或はその進行中右集団に参加し又は民戦派民団派の紛争を伝え聞き民戦派に応援すべく他所より馳せつけて犯行現場で右集団に参加したものであつて、右集団の情況等に照らし右集団が暴行行為に及び又場合によつては傷害の結果を発生し或は住居侵入器物損壊等の事態を見るに至るかも知れないことをも予想していたものと認めるのが相当であり、且同人等は、原判示第二の(イ)の尹吉換方(及び民団事務所)或は同(ロ)の安中範方に右集団の一部が侵入し原判示の様な器物損壊或は暴行傷害等を行うに際り、敢えて現場を去り或は右集団から離脱したものとも認め難いので、たとえ当初から攻撃の具体的目標を知つていなかつたとしても前記予想の範囲内に属する右住居侵入器物損壊暴行傷害等の点につきその犯意を共通にしていたものとして共謀による共同正犯の認定を受けても止むを得ない所と言わねばならない。固より、その情状としては集団行動に伴う特殊の心理状態等掬すべきものがあるけれども、その故に直ちに共同正犯の刑責を否定し去るべき筋合のものではなく、原判決が之を共同正犯として認定したのはまことに相当であつて、所論の様に共犯理論を不当に拡大適用したものと言うことはできない。

然らば、結局原判決には所論の様な事実誤認乃至共犯理論を拡大適用した瑕疵はないものと言うべく、右論旨も亦すべて理由がないから、之を採用することができない。

被告人尹一模の控訴趣意について。

同被告人に関する原判示第二の事実認定に誤がないことは、既に前段各弁護人の控訴趣意に対し判断したとおりであつて、所論につき検討しても未だ右認定を左右するに足らず、而して原判決を以て所論の様に政治的陰謀に基ずく弾圧であるとか或は結社の自由を犯して在日朝鮮人の政治活動を抹殺せんとする意図に出でたものであるとは目し難いので、右論旨は採用することができない。

被告人李霽雨の各控訴趣意について。

同被告人に関する原判示第二の事実認定に誤がないことは、之亦既に各弁護人の控訴趣意に対し判断したとおりであつて、所論引用の不在証明も必らずしも時刻の精確な点についてまでは不十分でありその余の所論につき検討しても未だ右認定を左右するに足らず、又記録を調査しても本件における検察官の捜査が終始脅迫の裡に進められたものとも認め難いので、右論旨は採用することができない。

被告人鄭孟祚の控訴趣意について。

原判決挙示の関係各証拠就中呉炳旭の検察官に対する第一回及び昭和二十七年七月十七日各供述調書証人李同心に対する裁判官の尋問調書同人の検察官に対する供述調書(以上何れも記録第五十一冊)共同被告人朴栄培の検察官に対する第二回供述調書(同第五十四冊)被告人鄭孟祚の検察官に対する各供述調書(同冊)等に徴すれば、同被告人に関する原判示第二の犯罪事実を認定するのに十分であり、同被告人の右検察官に対する供述を以て所論の様に検察官の欺罔により為されたものであるとは認め難いので、右論旨は採用することができない。

弁護人諫山博の控訴趣意第五点中原判示第二の事実に関する法令適用の誤を主張する論旨について。

暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項にいわゆる「団体若くは多衆の威力を示し、………若くは数人共同して」刑法第二百八条第一項、第二百二十二条、又は第二百六十一条の犯罪を為すに際り、各人がその犯行を分担して実行行為に当つた場合(即ち所論引用の昭和二十五年六月二十四日札幌高等裁判所が判決を言い渡した同庁同年(う)第九〇号第九一号事件の様な場合)においては、単に右条項を適用すれば足り重ねて刑法第六十条の規定を適用すべき限りでないこと所論のとおりであるけれども、右実行行為に当つた者以外にただ之等の者と右犯罪に関する共謀関係を有するに止まり而も自らは何等の実行行為をも分担しなかつた者が存する場合においては、右条項の外更に刑法第六十条の規定を適用するのが相当であり(昭和七年十一月十四日及び昭和八年十一月二十日の大審院判決参照)、又犯行の現場に行くと行かないとを問わず苟くも右の様な共謀関係を有する以上自ら実行行為に当らなかつた者と雖も共同正犯としての刑責を免れないことは寧ろ自明の理に属するから、前段同弁護人の控訴趣意第一点及び第三点に対する判断の中に説示したとおり右の様な共謀関係を認め得べき被告人等の原判示第二の犯罪事実に対し原判決が暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の外刑法第六十条を適用したのは固より正当であつて、原判決には所論の様な違法はなく、従つて右論旨も亦採用することができない。

同控訴趣意第十四点及び弁護人松井佐の控訴趣意第二点中何れも被告人呉元錫、同金寿興、同劉宗植、同尹一模、同李南伊、同呉大俊、同韓昌世、同朴栄徳、同趙東圭、同金英洙、同李成業、同金順南、同朴栄培、同金日泰、同丁殷燮、同河順千、同李霽雨、同鄭孟祚、同徐潤守に関する量刑不当の論旨、並びに弁護人今長高雄の被告人呉元錫、同徐潤守、同鄭孟祚、同韓昌世に関する量刑不当の論旨について。

本件記録並びに原裁判所及び当裁判所において取り調べた証拠にあらわれた所論その他の情状について調査するのに、被告人金寿興、同劉宗植、同呉大俊、同韓昌世、同朴栄徳、同李南伊、同趙東圭、同金英洙、同李成業、同金順南、同朴栄培、同金日泰、同丁殷變、同河順千に対する原判決の刑の量定はまことに相当であつて、之を不当とする事由を発見することができないので、右被告人金寿興外十三名に関する論旨は採用することができない。

そこで、同被告人等十四名の本件各控訴は刑事訴訟法第三百九十六条に則り何れも棄却すべきものである。

次に前同様情状について調査するのに、被告人呉元錫、同尹一模、同鄭孟祚、同李霽雨、同徐潤守に対する原判決の刑の量定は重きに失するものと認められるので、右被告人呉元錫外四名に関する限り論旨は理由があるものと言うべく、従つて原判決中同被告人等五名に関する部分(但し被告人呉元錫、同尹一模については有罪部分のみ)は刑事訴訟法第三百九十七条に則り何れも破棄を免れない。

弁護人松井佐同諫山博の各控訴趣意第一点中何れも原判示第一の事実認定に関する論旨、被告人白南植の控訴趣意、被告人張翊相の弁護人今長高雄の控訴趣意一の論旨、並びに弁護人諫山博の控訴趣意第二点の論旨について。

原判決挙示の関係各証拠を綜合すれば、(い)被告人陳祥鳳が原判示第一の(一)の共謀に関与した点(ろ)被告人白南植が同第一の(二)の共謀に関与した点及び(は)被告人金鳳洙が被害者申点竜を殴打したことにつき爾余の被告人等も共謀関係があつたとの点を除き、原判示第一の(一)(二)の各犯罪事実を認定するのに十分である。

弁護人諫山博の控訴趣意第二点の所論は、共同正犯の成立に必要な共謀関係を認めるためには、あらかじめ如何なる内容の共謀が為されたか、その共謀をした者は誰々であるか、現に起つた事件が右共謀の範囲内のものであつたかどうか等を証拠により認定しなければならない旨主張するけれども、共同正犯の成立に必要ないわゆる共謀は、必らずしも右所論の様にあらかじめ為されていたことを必要とするものではなく、犯行の現場に臨んで互に犯意を共通にすること即ち数人の者相互間に共同犯行の認識があり且互に他の者の行為を利用し合つて犯罪遂行のため協力する共通の意図があれば足りるものと解されるところ、前掲各証拠によれば被告人金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連は原判示第一の(一)(二)の犯行の場面に被告人陳祥鳳は同第一の(二)の犯行の場面に殆んど終始居合せ又被告人金鳳洙、同張翊相、同白南植も同第一の(一)の場面にある程度継続して居合せ何れも別に他の者の犯行を制止することもなく却つて自らも交々原判示の様な言動を為している事実が明らかであるから、右掲記の被告人等は各自関係部分につきたとえ事前の共謀はしていなくても上叙説示の様な意味において犯行現場における共謀関係にあつたものと言うべく、而して所論の様に単なる弥次馬や一寸様子を覗いて帰つたに過ぎない様な者は右被告人等の中には包含されていないので、原判決が右被告人等に対し共同正犯の事実を認定したことを以て所論の様に事実を誤認し或は共犯理論を不当に拡大適用したものと言うことはできない。尚、被告人張翊相が弁護人今長高雄の控訴趣意一、に主張する様な事情から原判示第一の(一)の申点竜方に赴き同所における犯行に坐するに至つたものであることは之を推認することができるけれども、関係各証拠就中申点竜の検察官に対する第一回供述調書(記録第五十冊)証人申点竜に対する裁判官の尋問調書(同冊)原審第四回第六回及び第七回各公判調書中証人申点竜の供述記載(同第四十一冊三五丁以下、同第四十三冊一二丁以下、及び同冊四六丁以下)原審第四回公判調書中証人李東洙の供述記載(同第四十一冊二五丁以下)原審第八回公判調書中証人黄祥泰の供述記載(同第四十三冊七〇丁以下)等に現われた同被告人の言動に徴すれば、たとえ同被告人において事態がより悪化することを防止し度い内意を有していたとしても、結局同被告人も原判示程度の犯行(但し前記(は)の金鳳洙による暴行の点を除く)については共謀関係にあつたものと認める外はない。

ただ、前記(い)被告人陳祥鳳が原判示第一の(二)の犯行につき共謀したとの点及び(ろ)被告人白南植が同第一の(二)の犯行につき共謀したとの点に関しては何れも之を確認するに足る証拠が存在せず(尚後記「無罪の判断」の項参照)、又前記各証拠殊に原審第二十五回公判調書中被告人金鐘寿の供述記載(同第四十五冊九二丁以下)及び被告人張翊相の検察官に対する第一回供述調書(同第五十五冊)等に照らせば、(は)被告人金鳳洙が被害者男点竜方において同人を殴打したのは全く瞬時の出来事であつて、同被告人はその後直ちに同所に居合せた被告人張翊相同金鐘寿等から屋外に連れ出された事実が明らかであるから、その場における情勢乃至雰囲気等から必らずしも予測し難い右の様な突発的な暴行の点についてまで爾余の被告人等がその犯意を共通にしていたものとは認め難く、従つて原判決が右(い)(ろ)(は)の点に関し各共謀関係の成立を認めたのは、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認に陥つているものと言わねばならない。

然らば、前記論旨は右(い)(ろ)(は)の共謀の点に関する限りその理由があるものと言うべく、従つて更に進んで原判示第一の(一)(二)の事実摘示と法令適用との関係が不明である旨論難する弁護人諫山博の控訴趣意第四点並びに右第一の(一)(二)の事実に対する法令適用の誤を主張する同控訴趣意第五点(尤も之に対する当裁判所の見解は既に原判示等二の事実に関する同旨の論旨に対し判断した所と同様である)その他各弁護人の量刑不当の論旨等につき判断する迄もなく、原判決中第一の(一)(二)に関する部分は既に上叙の理由により刑事訴訟法等三百九十七条に則り破棄を免れない。

弁護人諫山博の控訴趣意第六点の論旨について。

既に前段説示のとおり原判決中第一の(一)(二)に関する部分が破棄を免れない以上、本論旨に対しては特に判断を示す必要がないわけであるが、念のために当裁判所の見解を示せば、不法監禁罪の手段となつた単純な暴行や脅迫が不法監禁罪の中に吸収され別罪を構成しないことは所論のとおりであるけれども(昭和十一年五月三十日大審院判決参照)、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の様な特別の要件を附加された暴行脅迫又は刑法第二百二十三条の様な更に他の害悪を伴う暴行脅迫は何れも不法監禁罪の中に吸収されることなく夫々別罪を構成するものと解するのが相当であるから、原判決が原判示第一の(一)(二)の事実に対し刑法第二百二十条第一項の外同法第二百二十三条第一項及び暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項並びに刑法第五十四条第一項前段第十条等を適用したのは固より正当であつて、原判決にはこの点に関し所論の様な法令の適用を誤つた瑕疵は存しないわけである。

被告人陳祥鳳の控訴趣意について。

同被告人に関する(い)原判示第一の(一)の事実認定が誤であること及び(ろ)同第一の(二)の事実中共同被告人白南植が共謀者として之に関与した点につきその証明がないことは、既に弁護人松井佐の控訴趣意第一点及び弁護人諫山博の控訴趣意第一点第二点に対し説示したとおりであるから、右部分に関する所論に対しては判断を省略するが、同第一の(二)の其の余の部分及び同第二の各事実は原判決挙示の関係各証拠に照らしその証明十分であり(即ち、右第一の(二)における被告人陳祥鳳の言動が原判示の様な各犯罪に該当することは多く説明を加えるまでもない所であり、又第二の犯罪についても記録第五十三冊中呉大俊の検察官に対する第一回第二回各供述調書同第五十五冊中金鐘讚の検察官山本義春に対する供述調書同第五十一冊中証人李春丁に対する裁判官の尋問調書等に徴し同被告人が共謀関係にあつたことを窺知することができ、右第二の犯罪に関する所論引用の不在証明も時刻の点についてまでは措信し難い)、尚記録について調査しても本件に関し所論の様な脅迫拷問等が行われたものとは認め難いので、結局、右論旨は前記(い)等の点に関する限り理由があるけれどもその余の関係においては理由がない。

被告人金鐘寿の控訴趣意について。

前記(い)(ろ)の二点及び(は)同被告人等が原判示第一の(一)における共同被告人金鳳洙の殴打暴行に関し共謀関係があつたとの点につきその証明がないことは、前記弁護人松井佐同諫山博の各控訴趣意に対し説示したとおりであるが、右(い)(ろ)(は)の諸点を除いた原判示第一の(一)(二)の事実及び同第二の事実は原判決挙示の関係各証拠により之を認定するのに十分であつて、右証拠の内李珍雨の検察官に対する供述調書が所論の様な脅迫強要誘導等により作成されたものであるとは認め難く、又右認定に反する所論弁疏或は不在証明に関する各証拠につき検討しても必らずしも右認定を覆えすに足りない。尚同被告人が本件につき二回逮捕され或は不法な手続により逮捕され、又は本件捜査一般に亘り憲法第三十八条を無視した事態があつたことは、何れも之を認め難い。然らば、結局、右論旨は前記(い)(ろ)(は)の諸点に関する限り理由があるけれどもその余の関係においては理由がない。

被告人金鐘讚の控訴趣意について。

前記(い)(ろ)(は)の諸点を除く原判示第一の(一)(二)の事実及び同第二の事実は原判決挙示の関係各証拠により之を認定するのに十分であつて、所論につき検討しても右認定を左右するに足りないので、結局論旨も亦右(い)(ろ)(は)の諸点に関する限り理由があるけれどもその余の関係においては理由がない。

弁護人諫山博の控訴趣意第八点の論旨について。

被告人李起栄等に対する原判決の原本(記録第四十七冊二一六丁の次葉以下)中第十七枚目乃至第二十枚目の各葉における文字の記載が著しく鮮明を欠いていることは所論のとおりであるけれども、右各葉は「何れも罪となるべき事実」の摘示の一部分に関するものであつて、右原本中その余の事実摘示及び主文証拠説明法令適用等に関する部分は夫々明瞭に記載されているから、所論の様に右判決文全部を無効とすべきものではなく、問題は右記載の不鮮明が事実摘示に関する理由不備の瑕疵に当るかどうかの点にかかつて来るわけである。而して、右の内第十七枚目第十九枚目第二十枚目の各葉即ち原判示第二の(ロ)後半同第三の冒頭及び(イ)並びに同第五乃至第七第九の各事実摘示に関する部分は辛うじて判読することが可能であるから、未だ以て判決の理由を具備しないものとして原判決破棄の事由とは為し難いが、ただ右第十八枚目即ち原判示第三の(イ)末尾及び(ロ)(ハ)の各事実摘示に関する部分に至つては之を判読することさえ不可能な文字があり延いてその意味を領解することもできないから、結局原判決にはその事実摘示の一部に関する理由不備の違法があるものと言うべく、従つて原判決中原判示第三の事実摘示に関係を有する被告人金基昊、同梁在義、同李起栄、同張白樹、同李金水に関する部分は、更に進んで右第三の(イ)(ロ)(ハ)の事実に対する法令適用の誤を主張する同弁護人の控訴趣意第五点(尤も之に対する当裁判所の見解は既に原判示第二の事に関する同旨の論旨に対し判断した所と同様である)の論旨及び各弁護人の右被告人等に関する量刑不当の論旨につき判断する迄もなく、刑事訴訟法第三百九十七条に則り破棄を免れない。

弁護人松井佐同諫山博の各控訴趣意第一点中被告人金基昊、同梁在義の原判示第二第三の事実認定に関する論旨及び被告人梁在義の控訴趣意について。

原判決挙示の関係各証拠殊に金天得の検察官に対する第一回及び第四回並びに昭和二十七年八月十五日附及び同年十二月十二日附各供述調書(記録第十三冊同第五十一冊但し前二者は各謄本編綴)中詳細或は明確で理路も正しく従つて十分な信憑力を有するものと認められる同人の供述記載に徴すれば、被告人金基昊が原判示第二の(イ)(ロ)及び第三の(イ)の各犯行につき又被告人梁在義が同第二の(イ)(ロ)の犯行につき夫々共謀関係があつたことを認定するのに十分であつて、被告人両名の不在証明に関する所論引用の各証拠及び当審で取り調べた各証拠につき検討しても時刻の精確な点までは措信し難いものがあり未だ上記の判断を左右するに足りないが、被告人梁在義が右第三の(イ)の犯行につき原判示高塔山における共謀に関与したことを確認させるに足る証拠は存在しないので、結局右論旨は、被告人梁在義の右第三の(イ)の犯行に関する部分に限りその理由がある(従つて刑事訴訟法第三百九十七条に則り原判決中同被告人に関する部分はこの点から言つても破棄を免れない)けれども、その余の関係においては理由がない。(原判示第三の(ロ)(ハ)の事実については前段説示のとおり判文自体が不明であつてその理由により破棄を免れないので、右の事実に関する論旨については判断を省略する。)

被告人李金水の各控訴趣意について。

原判決挙示の関係各証拠を綜合すれば、同被告人に関する原判示第二の犯罪事実を認定することができるけれども、同被告人が更に同第三の(イ)等の犯罪事実に参加した点については之を確認させるに足る証拠が存在しない(即ち記録第五十一冊中証人李道子に対する裁判官の尋問調書には同女の供述として"く、従つて原判決中同被告人に関する部分はこの点においても刑事訴訟法第三百九十七条に則り破棄を免れない。

検察官の控訴趣意第一点及び第二点の論旨について。

原判決が、爆発物取締罰則にいわゆる「爆発物」の意義に関し、要するところ、

同罰則第一条の「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ云々」と言う規定の文言及びその法定刑が刑法所定の類似犯罪(例えば刑法第百十七条等)の法定刑に比較して重い点等を考慮すれば、右罰則にいわゆる「爆発物」とは極めて高度の爆発性能を有し爆発自体による直接の効果として社会公共の平和を攪乱し又は不特定多数人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足る能力を有すると認められる物件のみを指称し同じく爆発性能を有していても、それが右の程度に達しないと認められる物件は、右罰則にいわゆる「爆発物」には該当しないと解するのが相当である。との解釈を採り、右見解に立脚して、後で詳述する様な性能を有する本件ラムネ弾は末だ以て社会公共の平和を攪乱し人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足る破壊力を有しないものと為し、従つてそれは右罰則にいわゆる「爆発物」に該当しないものと判定していることは、所論のとおりである。

そこで、先ず右法令解釈の当否につき考究し、次に進んで本件事実に対する法令適用の問題につき検討することにしよう。

凡そ刑罰法規が、一定の行為を処罰することにより社会生活における平和と秩序とを維持することを目的として制定された社会的規範たる性質を有するものである以上、それに関する解釈も右法規の目的性質に照らして自らなる方向を与えられ特有の色彩傾向を帯びるものであることは、固より当然の所であり、従つて刑罰法規における用語の意義が自然科学又は社会科学の他の部門或は他の法域における同一用語の意義と必らずしもその分界において完全に一致すべきものと限らないことも、殆んど自明の理に属すると言うことができる。と共に、他面、かかる刑罰法規の解釈を為すに際つては、飽迄も各規定の文言に客観的に表明されている法意にできる限り忠実に従うべきものであつて、上叙刑罰法規の目的性質による解釈の立場以上に踏み出だし濫りに主観的評価を挿んで制限的解釈を加えたり或は拡張的解釈を施したりする様なことは、厳に之を慎しまねばならない。

ところで、爆発物取締罰則第一条は「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ云々」と規定している。而して、右にいわゆる「爆発物」の概念は、本来自然科学に属する理化学上の爆発現象或は爆発物の概念を基礎として、採り容れられたものと解されるので、先ず理化学的概念としての「爆発」とは如何なる現象を指称するかについて考察することにする。尤も、理化学上においても、各種爆発現象の進行過程が必らずも詳らかに解明されて居らず、従つて未だ厳密な意味におけるその科学的定義は確立されていないものの様であるが、何れも記録第四十八冊に編綴されている原審鑑定人谷巌作成の鑑定書、倉田明に対する爆発物取締罰則違反被告事件の第七回公判調書謄本中証人二神哲五郎の供述記載部分、同人作成の鑑定書謄本、金昌燮外一名に対する放火未遂等被告事件における鑑定人塚元久雄作成の鑑定書謄本、尹正根外三名に対する爆発物取締罰則違反被疑事件における山本祐徳作成の鑑定書謄本、後藤関三に対する同罰則違反被疑事件における山本祐徳作成の鑑定書謄本、鄭碩述外十三名に対する加重逃走等被告事件における鑑定人伏崎弥三郎作成の鑑定書謄本の各記載を綜合すれば、概ね次の様に言うことができよう。即ち、理化学上の「爆発」と言う概念には広狭二義があり、広義においては「或る物体系が急激迅速に増大する現象」を、狭義においては「或る物質の分解又は化合が極めて急速に進行しその際一時に多量の熱と瓦斯を発生しその体積が急激迅速に増大する現象」を各指称し、かかる現象を惹起し得るように調合装置された物件を「爆発物」と指称するのであつて、右広狭二義の相異は、後者が殆んどすべて化学反応に伴いつつ惹起される(以下単に化学的爆発と称する)のに対し、前者は必らずしも化学反応に伴わず単なる物理的な原因による体積急増の場合(以下単に物理的爆発と称する)をも包含する点に存すると解されるが、結局理化学上の「爆発」と言う概念の一般共通的な構成要素は「或る物体系の体積急増」と言う点に存するものと言うことができる。そこで、前記罰則にいわゆる「爆発物」の意義を解釈するに際つても、右理化学上の一般共通的な意義即ち広義における「爆発」の概念に従うべきものと考える。然らば、右の様な意義における理化学上の爆発現象を惹起し得るように調合装置された物件はすべて右罰則にいわゆる「爆発物」に該当するかと言うと、必らずしもそうではなく、前に述べた様な刑罰法規の目的性質及び同罰則第一条が「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ云々」と規定している点等に鑑み、同罰則にいわゆる「爆発物」とは、右理化学上の爆発を惹起し得べき物件の内で、爆発作用そのものにより治安を妨げ又は人の身体若しくは財産を害するに足るものとして社会通念上危害を感ぜしめる程度の性能を有するものを指称すると解するのが相当であり、ここに至つて始めてそれは刑罰法規上の概念として成立するわけである。

斯様な見解に立てば、たとえ前記の様な理化学上の爆発を惹起し得べき物件であつても、いわゆる玩具の花火や癇癪玉或はマツチ等の如く、之によつて惹起される爆発現象そのものが極めて零細軽微であり従つて前述の様な治安を妨げ又は人の身体若しくは財産を害するものとして社会通念上危害を感ぜしめる程度に達しないものは、前記罰則にいわゆる「爆発物」に該当しないものと解される、と同時に、他面、かかる理化学上の爆発を惹起し得べき物件であり且苟くも之が爆発作用そのものにより治安を妨げ又は人の身体若しくは財産を害するものとして社会通念上危害を感ぜしめる程度の性能を有するものであるならば、右罰則にいわゆる「爆発物」に該当するものと解すべく、更に進んで原判決の提唱する如くその爆発性能が極めて高度であるとか或は不特定多数人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足る能力を有すると言う様な加重要件は之を必要としないものと言わねばならない。原判決の提唱する「極めて高度の爆発性能」とか或は「甚大な被害」と言う様なことは法令解釈の基準としては不明確に過ぎるものであり、又右罰則第一条にいわゆる「人」を右の様に「不特定多数人」と解することも条文上の根拠に乏しく、寧ろ右にいわゆる「人」は刑法第百九十九条「人ヲ殺シタル者ハ云々」或は同法第二百四条「人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ云々」の各「人」と同様に特定若しくは単数の人であつてもよく、更に「財産」に関する場合には法人であつても妨げないものと解するのが相当である。現に、いわゆる「火焔壜」に関する昭和二十八年十一月十三日最高裁判所第二小法廷言渡の判決も「爆発物取締罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上のいわゆる爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において薬品その他の資料が結合せる物体であつて、その爆発作用そのものによつて公共の安全を攪乱し又は人の身体財産を傷害損壊するに足る破壊力を有するものをいうと解すべきである旨判示し、当該事件に対する第二審判決或は本件に対する原判決が夫々提唱している様な加重要件を掲げることを避けているのであつて、結局、原判決の前記解釈は聊か制限的方向に行き過ぎた憾がある様に思われる。

尤も、(一)前記罰則第一条は法定刑として死刑又は無期若しくは七年以上の懲役又は禁錮を規定して居り、類似の犯罪に関する刑法第百十七条第一項前段の法定刑が死刑又は無期若しくは五年以上の懲役となつているのに対し、その刑がやや重いものの様に見え、又(二)同罰則第三条の法定刑が三年以上十年以下の懲役又は禁錮となつていて、いわば類似の犯罪に関する刑法第百十三条或は同法第二百一条の各法定刑が二年以下の懲役となつているのに対し著しく重く、更に(三)同罰則第九条の法定刑が十年以下の懲役又は禁錮となつていて、類似の犯罪に関する刑法第百三条或は同法第百四条の各法定刑が一年以下の懲役又は二百円以下の罰金となつているのに対し之亦著しく重くなつていることは、延いて右罰則にいわゆる爆発物の意義を原判決の様に高度の爆発性能を有し或は不特定多数人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足る能力を有する物件のみを指称する趣旨に解すべきものではあるまいかとの疑念を生ぜしめるかも知れない。併し、這般の事情を順次検討するのに、先ず(一)右罰則第一条の法定刑と刑法第百十七条第一項前段の法定刑との軽重を法律的に考察すれば、刑法第九条第十条或は刑法施行法第三条第三項等の法意に照らし、両者の間に軽重はない(或は禁錮刑を包含する前者の方が後者より却つて軽い)ことになり、従つて後者より前者を重しと為す原判決の論拠そのものが既に法令に定められた刑の軽重比照の準則に悖る非法律的な謬見であると認められるのみならず、仮に後者より前者を重しと為す見解が成立するとしても、それは前者が「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的」と言う特別の主観的要件を具えているのに対し後者は必らずしもかかる特別の主観的要件を具えていなくてもよいこと等に因るものとして、之を理由附けることも不可能ではない。次に、(二)同罰則第三条の法定刑が刑法第十三条或は第二百一条の各法定刑に比し著しく重くなつている点は、前者が爆発物と言う-(その威力が瞬時に発生し且その威力の作用する方向乃至範囲も不特定或は包括的であつて通常人の動作を以てしては容易に阻止或は退避することができぬ様な)-特殊の危険手段に関するものであり、而も後者と斉しく予備行為の範疇に属するとは言え、後者の如く予備行為一切を包含するものではなく、「爆発物若クハ其使用ニ供ス可キ器具ヲ製造輸入所持シ又ハ注文ヲ為シ」と言う特定の形態を具えた予備行為に限つて規定したものであること等に鑑み、両者の法定刑の懸隔がしかく大きいことの当否は暫らく別として一応その理由を存するものと言うことができよう。更に、(三)同罰則第九条の法定刑が刑法第百三条第百四条の各法定刑に比し著しく重い点も、前者が前述の様な特別の主観的要件を以て爆発物と言う特殊の危険手段に関する罪を犯した者或はその証拠に関する特別規定であるのに対し、後者は概してより法定刑の軽い刑法各本条の罪を犯した者或はその証拠に関し抽象的に規定した一般法であること等に鑑み、之亦両者の懸隔がしかく大きいことの当否は暫らく措き一応その理由を見出すことができよう。のみならず、飜つて右(二)(三)において比較の基準とされた前記現行刑法の諸法条に盛られている各法定刑そのものが軽きに失する憾がありはしないかと言う点についても検討を要する余地が存するものと考えられるところ、昭和十五年三月十九日刑法並監獄法改正調査委員会から発表されたいわゆる「刑法改正仮案」は、現行刑法の右諸法条即ち第百十三条或は第二百一条又は第百三条或は第百四条に順次相応ずる同案第二百六十四条(五年以下の懲役)或は第三百四十一条第一項(七年以下の懲役)又は第二百二十二条第一項(五年以下の懲役又は千円以下の罰金)或は第二百二十六条第一項(五年以下の懲役又は千円以下の罰金)において、夫々括孤内に示したとおり各その法定刑を引き上げている。又他方現行爆発物取締罰則の法定刑が聊か重きに失する面を有することも見逃し難い所であつて、前記「刑法改正仮案」は、右罰則をその中に摂り入れ、同罰則第三条等に相応する同案第二百五十条(六月以上七年以下の懲役又は禁錮)において放火の予備通謀に関する前記第二百六十四条或は殺人の予備通謀に関する前記第三百四十一条第一項の各刑に近接する(或はそれよりも却つて軽くなる)様にその法定刑を引き下げ、尚犯人蔵匿罪証湮滅の罪については、爆発物に関する罪について特別の規定を設けず前記第二百二十二条第一項及び第二百二十六条第一項の一般規定の中に解消させて了つている。斯くして、右「刑法改正仮案」においては、爆発物に関する罪の法定刑と他の類似犯罪の法定刑との軽重が或は現行法の場合に比し近接し或は全く同一に帰しているわけであるが、だからと言つて、右「刑法改正仮案」の様な法制の下における「爆発物」の意義を現行法の場合に比し緩やかに解釈してよいと言う筋合のものとも考えられない。斯様に観察して来ると、既にその妥当性につき検討の余地を存する現行刑法における前記各条の法定刑を絶対的な基準とし、それとの比較において爆発物取締罰則の法定刑が重いことを論拠として、同罰則にいわゆる「爆発物」の意義を原判決の如く色々制限的に解釈することは、全く謂れのない論法と言うべく、従つて前記の様な疑念は自ら消失するに至るであろう。

それにしても、尚最後に払拭しきれない疑念として残るのは、前記罰則各条所定の法定刑が、前記刑法各条との比較を離れそれ自体につき観察しても、今日行われている量刑基準乃至量刑通念とも称すべきもの(之等は必らずしも客観的に明確であるとは言い難いが、大勢の自ら帰一する所は存するであろう)に照らして重きに過ぎるのではないかと言う点であつて、延いて同罰則にいわゆる「爆発物」の意義も右法定刑が重いことにふさわしく極めて高度或は相当の性能を有するものに限定して解釈すべきではないかとの考え方も生じて来るわけである。併し、それでは右法定刑にふさわしいものとして如何なる程度以上の性能を有するものでなければならないか、その基準を客観的(敢えて数学的であること迄は要しないにしても)に示すことは、恐らく至難の業に属するのみならず、そもそもある犯罪に対し如何なる法定刑を盛るのが妥当であるかの問題は本来立法者の権限と責任とにおいて決すべき事柄であつて、司法の任に当る裁判所においてかかる問題にまで立ち入つて詮議し更にその当否に関する評価を根拠にして法令の解釈をまで左右する様なことはその所を得ないものと言うべく、裁判所としてはせいぜい具体的事案の処理に際り、その権限と責任とに委ねられている法律上の減軽乃至酌量減軽等を行うことにより量刑の妥当を期する程度で甘んずるの外はないものと考えられるので、前記罰則各条の法定刑がそれ自体重きに過ぎるのではないかとの疑念は尚依然として存しつつも、そのことの故に同罰則にいわゆる「爆発物」の意義を不明確な基準により制限的に解釈することは、当裁判所の採らない所である。

以上諸方面から観察した所を綜合すれば、結局、前記罰則にいわゆる「爆発物」とは、理化学上のいわゆる爆発現象を惹起し得るように調合装置された物件であり、且之が爆発作用そのものによつて治安を妨げ又は人の身体若しくは財産を害するに足るものとして社会通念上危害を感ぜしめる程度の性能を有するものを汎称し、さらに進んで原判決の言う様にその爆発性能が極めて高度であり又は不特定多数人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足ることを要しないものと解するのが相当であつて、原判決は同罰則にいわゆる「爆発物」の意義を誤解しているものと言う外はない。

而して、右の様な見解に立脚しつつ、本件におけるいわゆる「ラムネ弾」の事実上の性能について調査するのに、原審押収にかかるラムネ瓶一本(証第四号)及びラムネ瓶破片約二本分(同第九号)ラムネ瓶破片五個(同第十二号)ラムネ瓶破片若干(同第十三号)ラムネ瓶破片五十三個(同第十四号)並びに原審鑑定人谷巌作成にかかる昭和二十八年五月二十四日附鑑定書(記録第四十八冊)の記載に徴すれば、右押収にかかる証第四号のラムネ瓶中にはカーバイト三十四瓦位が詰められて居り又証第九号第十二号乃至第十四号(右鑑定書に六号八号十一号十二号とあるのは、記録第四十冊中原審第二回公判調書添附の領置目録と対照し同第四十四冊中原審第十四回公判調書における誤記を右鑑定人においてそのまま受け継いだものであつて、夫々本文の第十三号第九号第十二号第十四号に該当するものと解する)の各ラムネ瓶破片の内側には水酸化カルシウム即ち消石灰が附着していることが認められるから、原判示第三(被告人鄭在湖、同金晩昌の関係では第二)の犯行において使用された俗称ラムネ弾(被告人金基昊等に対する原判決原本中原判示第三の事実摘示に不明の部分が存することは既述の通りであるが、その第十七枚目裏の(イ)の部分及び同判決末段爆発物取締罰則違反の罪の成否に関する判断の部分等を綜合し、原判決が少くとも原判示第三の(イ)の犯行にラムネ弾が使用された旨判示していることを窺うことができる)は各ラムネ瓶に概そ三十四瓦位宛のカーバイトを詰め之に水を注入すると言う構造を有していたものであることを推認することができる。ところで、右谷巌作成の鑑定書並びに前記山本祐徳作成の鑑定書謄本及び前記塚元久雄の鑑定書謄本の各記載を綜合すれば、一般に斯の種ラムネ弾を使用するには右の如くカーバイトを詰めたラムネ瓶に水を数十瓦注入し之を傾斜或は倒立させて直ちに投ずると言う方法によるのであるが、かかる操作により惹起される現象は、カーバイトと水の反応により急激多量にアセチレンガスを発生し且その反応熱等により右ガスの膨脹を伴い、一方前記傾斜等の際瓶内のラムネ玉が瓶の口を密閉するので、瓶内で噴出を続けるガスの圧力が急速に高まり、遂に容器である瓶の外壁を破つて急激にその体積を増大し之がため瓶の破片を飛散させると言う現象であつて、右経過におけるカーバイトと水の反応によるアセチレンガスの発生は化学反応であるけれども、右ガスの発生経過そのものは爆発ではなく、右の様に発生したアセチレンガスが密閉された瓶内で急速に充満増加するため高圧を生じそれが瓶の耐圧限界を超え前記の如く之を破裂させるに至る現象は即ち一種の物理的爆発に属するものと目されるので、本件ラムネ弾は理化学上いわゆる爆発現象を惹起し得るように調合装置された物件に該当するものと言うことができる。そこで、その性能威力の程度について検討するのに、前掲各証拠物件及び(1) 前記鑑定人谷巌作成の鑑定書(2) 鑑定人塚元久雄作成の鑑定書謄本並びに(3) 当裁判所の検証調書(但し昭和二十九年十二月六日検証の分)(4) 当審鑑定人塚元久雄同谷巌連名作成の鑑定書(5) 原裁判所の昭和二十七年十月二十七日の検証調書、原裁判所の証人河合ことに対する尋問調書、検察官の金応[王賛]方に対する検証調書の各記載(尚(6) 前記証人二神哲五郎の供述記載部分(7) 同人作成の鑑定書謄本参照)によれば、原判示第三の犯行に用いられたと推認されるラムネ弾即ちラムネ瓶にカーバイト約三十四瓦前後を詰め数十瓦の水を注入したものが、之を傾斜或は倒立させた後五秒乃至十数秒にして爆発する際には、多数(場合によつては百数十個)のガラス破片を最大距離五十米位最高度五米乃至七米位に及ぶ四囲に飛散させるが、その身体若しくは財産に対する損傷能力は、各場合により、(1) 爆心より一米以内であれば露出の皮膚にはかなりの被害を与え眼は失明し或はけい動脈等を切断すれば生命の危険も考えられ、又爆心より一米附近においては厚さ三分の杉板を貫通するに至らず、距離三米附近においては厚さ二粍のボール紙を破る程度であり、(2) 爆心部附近においてはボール紙数ケ所を貫通破壊し或は木箱(横四十二糎縦三十糎深さ三十糎)に最大三糎最少七粍の損傷を与え或は木箱の内部に貼られた西洋紙を数多の箇所で損傷し、(3) 爆心部においては円形のアルマイト製漏斗を変形させて略々楕円形と為しその外側面には数ケ所の凹みを生ぜしめ更にその外側上部の個所を瓶の破片が貫通し、(4) 爆心より半径五米内外においては人体の危険が予想され又それ以上の距離においても必らずしも安全を保し難く、さらに(5) 本件の金応[王賛]方屋内に投入されたラムネ弾一個は同家二階六畳の間の押入の襖をつき破り同押入の中で爆発しその破片が又襖を破つて押入外に飛び出し隣室まで飛び散つていること等が認められる(尚(6) (7) カーバイト十八瓦を詰め水三十立方糎を注入したラムネ弾の場合、ラムネ弾から約十糎離れた距離に窓硝子サラシ木綿牛皮鉛板木材があると、窓硝子はめちやめちやに破損し、サラシ木綿は所々に切つた様に口が開き多くはラムネ瓶の破片が通過した形跡を示し、革皮も切れて破片が通過し、鉛板には深さ約二分の一粍程度に破片が突きささり、木材の所々に深さ約二分の一粍の損傷を受け、更に偶々実験中約五米の距離に居た実験補助者の足に硝子の破片が当り、而も割れ口でない所が当つたと想像されるにも拘らず、洋服及び靴下を通して皮下出血を起こした事実があり、五米乃至十米位の範囲であれば人体を傷つけ五米より近くであれば治療を要する程度の傷を与え、又その爆音は屋外では五六十米以内屋内では三十米以内に居る人を驚かしめるに足るものと認められること参照、因みに前記(6) の鑑定書によればラムネ弾の場合カーバイト十八瓦に水三十立方糎を混和するのが最適量とされている)。以上は、恐らく、カーバイトの純度形状・カーバイトと水の混和量・ラムネ瓶の硬度形状容量・又は外部の気温気圧湿度風速或は破砕された瓶破片の形状飛散の方向或は対象物の性質形状位置等の相関的関係その他の諸条件如何により各場合場合に応じ多少の相異を呈しているものと考えられるが、之を要するところ、本件ラムネ弾は、その爆発に際し多数のガラス破片を四囲に飛散させ、右爆発作用そのものにより人の身体若しくは財産を損傷し又人の身体財産を直接損傷しなくても本件の如く(原判示第三の(イ)では三個とされている)之を数個以上同時に或は接続して併用するときはその爆音と共に附近人心に不安脅威の念を生ぜしめ延いて社会の平安を害するに足るものとして、社会通念上危害を感ぜしめる程度の性能を有するものと認めるべく、仍ち右は前記罰則にいわゆる「爆発物」に該当するものと目するのが相当であつて、原判決が之を右「爆発物」に該当しないものと為し被告人金基昊外六名が之を使用したとの訴因を罪にならないものと判断したのは、結局前に指摘した様な法令の誤解によりその適用を誤つたものと言わねばならない。

然らば、結局、原判決は右の点に関する限り判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤に陥つているものと言うべく、右論旨は理由があるので、原判決中被告人金基昊、同梁在義、同李起栄、同張白樹、同李金水、同鄭在湖、同金晩昌に関する部分は、刑事訴訟法第三百九十七条に則り破棄を免れない。

弁護人諫山博の控訴趣意第九点の論旨について。

原判決挙示の関係各証拠を綜合すれば、被告人金基昊に関する原判示第五の犯罪事実を認定するのに十分であつて、同被告人の不在証明に関する所論引用の各証拠は必らずしも全面的には措信し難く、その余の所論につき検討しても原判決の事実認定に誤があるものとは認め難いので、右論旨は之を採用することができない。

被告人金基昊の控訴趣意について。

記録について調査するのに、本件の搜査に際り所論の様な拷問脅迫等が行われた事跡は之を認め難く、又原審の訴訟手続に所論の様な刑事被告人の権利を蹂躪した違法があるものとも認め難い。而して、同被告人に関する原判示第二第三(但し(イ)の部分のみ)第五の各事実認定に誤がないことは、既に弁護人松井佐、同諫山博の各控訴趣意に対し説示したとおりであり(尚原判示第五の投げつけられた硝子瓶が二個であることも原判決挙示の証人金堀博幸の供述調書謄本の記載によりこれを肯認することができる)、又原判決を以て所論の様な政治的意図に基ずく弾圧であるとは全く認め難いから、右論旨は原判示第三の(ロ)(ハ)に関する部分(弁護人諫山博の控訴趣意第八点に対する判断参照)を除きその余の関係においては理由がない。

弁護人諫山博の控訴趣意第十点の論旨について。

記録について調査するのに、被告人金基昊に対する原審第七回公判調書(第十三冊一八七丁以下)の記載によれば、鄭宗鉄に対する器物毀棄被告事件の記録中同公判廷において証拠調が為されたのは、検察官の請求にかかる証人薄田マサ子の所在搜査報告謄本証人薄田マサ子の尋問調書謄本証人権英源の尋問調書謄本崔泰山の告訴状謄本領置調書謄本及び弁護人の請求にかかる右被告事件の第四回公判調書謄本中証人伊相哲、同季弼秀、同李相観、同韓尚伊、同梁在義の各供述記載部分(尚原審第六回公判調書の記載によれば訴訟関係人は右謄本が原本と相違のないことを確認し且之により訴訟手続を進行させることに異議がない旨を表明している)のみであることが明らかであるから、右各書面並びに原審第六回公判廷における手続更新により原裁判所に引き継がれたものと認められる金基昊、鄭宗鉄に対する器物毀棄被告事件の第一回乃至第五回各公判調書(証人崔泰山、同大山信弘、同金堀博幸、同崔倉弘、同権英源の各供述調書を存する第二回公判調書を含む)及び右第五回公判に至る迄の関係書類以外は、本件の訴訟手続上全く無関係な書類と言うべく、従つて本件訴訟記録中に編綴すべき筋合でないことは所論のとおりである。然るに、右以外の書類殊に右鄭宗鉄に対する第一審判決及び控訴審に関する記録等の謄本まで本件訴訟記録中に編綴してあるのは不当の譏を免れず、更に進んでかかる書類の性質内容如何によつては裁判所の事実認定に不当な影響を及ぼすものとして違法と目すべき場合も生じるであろう。併し、原判決は何れも適法な証拠調を経たものと認め得べき右掲記の証人薄田マサ子に対する尋問調書謄本並びに被告人金基昊及び鄭宗鉄に対する前記被告事件の第二回公判調書謄本中証人崔泰山、同大山信弘、同崔倉弘、同権英源、同金堀博幸の各供述記載部分により原判示第五の事実を認定しているのであつて、尚右不当に編綴されている各書類につき検討しても何等証拠資料となり得べきものはなく之がため原判決の右事実認定に影響を及ぼしているものとは認め難いので、結局本件の場合右の様な書類が編綴してあることの故を以て判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続上の違法があるものとは目し難く、従つて右論旨は採用することができない。

同弁護人の控訴趣意第十一点の論旨について。

原判決が被告人金基昊に関する第五の事実として「……鄭宗鉄と共謀の上、昭和二十七年三月二十八日午後十一時頃、福岡市幾世町の在日大韓民国居留民団福岡支部前路上より、同事務所玄関硝子窓目がけて人糞を詰めた硝子瓶二個を投げ付け、因つて同窓子二枚を損壊し、同事務所屋内のセメント床上一面に人糞を散乱させたものである」旨認定摘示し、右事実に対し刑法第二百六十一条等を適用処断していることは、所論のとおりであるが、原判決の趣旨は窓硝子二枚を損壊した点を器物毀棄罪となるべき事実として摘示しその余の人糞散乱の点は単なる情状として附記したに過ぎないものと解することができ、而して右窓硝子二枚の損壊が刑法第二百六十一条に該当することは固より明らかな所であるから、原判決には所論の様な理由不備乃至審理不尽の違法はないものと言うべく、従つて右論旨も亦採用することができない。

同弁護人の控訴趣意第十二点の論旨について。

刑事訴訟費用法第一条第一号に「公判ニ付召喚シ又ハ公判ニ於テ取調ヘタル証人……ニ給スヘキ日当旅費及宿泊料」と規定しているその「公判」と言うのは、当該被告事件についての公判であれば足り、当該被告事件につき移送分離併合更新等の手続が為された場合においてはかかる手続が為される以前に開かれた公判をも含む趣旨と解するのが相当であるところ、記録について調査するのに、所論に掲げる証人崔泰山、同大山信弘、同崔倉弘、同権英源、同金堀博幸は、何れも被告人金基昊に対する器物毀棄被告事件につき分離併合更新等の手続が為される以前当時同事件の係属していた福岡地方裁判所の第二回公判廷において取調を受けた者であることが明らかであるから、結局同被告人に対し刑の言渡をした原裁判所(即ち福岡地方裁判所小倉支部)が刑事訴訟法第百八十一条第一項に則り右各証人に支給した訴訟費用を同被告人に負担させたのは固より正当であつて、原判決にはこの点に関し所論の様な違法の廉はないので、右論旨も亦採用することができない。

以上を要するに、原判決中、被告人陳祥鳳、同金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連、同金鳳洙、同張翊相、同白南植に関する部分(但し被告人陳祥鳳については有罪部分のみ)は、弁護人松井佐、同諫山博の各控訴趣意第一点中何れも関係部分、被告人白南植の控訴趣意、被告人張翊相の弁護人今長高雄の控訴趣意一、並びに弁護人諫山博の控訴趣意第二点等に対する判断において示した理由により、被告人李起栄、同張白樹、同李金水、同金基昊、同梁在義、同鄭在湖、同金晩昌に関する部分は、弁護人諫山博の控訴趣意第八点(但し被告人鄭在湖、同金晩昌関係を除く)、同第一点中被告人梁在義に関する部分及び同被告人の控訴趣意、被告人李金水の控訴趣意、並びに検察官の控訴趣意一、二等に対する判断において説示した理由により、被告人尹一模、同呉元錫、同鄭孟祚、同李霽雨、同徐潤守に関する部分(但し被告人尹一模、同呉元錫については有罪部分のみ)は、各弁護人の量刑不当の論旨に対する判断において説示した理由により、何れも之を破棄し、尚当裁判所は本件記録並びに原裁判所及び当裁判所において取り調べた証拠により直ちに判決することができるものと認めるので、刑事訴訟法第四百条但書に従い更に自ら判決することにする。

(罪となるべき事実)

第一、若松市北港埋立地には約八十戸より成る朝鮮人部落があつて、内十三戸位が在日大韓民国居留民団(以下民団と略称)にその余の大多数が在日朝鮮統一民主戦線(以下民戦と略称)に夫々所属していたが、同部落共同生活の運営には多年同所に居住する民戦派の実力者(同市の最高幹部)である被告人陳祥鳳等が当つていた。

然るに、同部落で古鉄商を営み且民団若松支部の顧問である平山点竜こと申点竜は、前記陳祥鳳と個人的に不仲であつたことも興つて部落常会にも出席せず、寄附を求められても応ぜず、更に同人は右部落で唯一の電話加入者であり、その自宅には屡々警察官が出入していたところから、同部落内では予ねてより部落内の犯罪者が検挙されるのは同人が電話等で警察に密告する為であるとの風評もあつたところ、偶々昭和二十七年六月中旬頃同部落居住者中対岸戸畑市の八幡製鉄株式会社戸畑作業所から伝馬船で屑鉄を盗み出した者があり、その帰途を若松市警察署員によつて逮捕されるに及び、前記風評が愈々事実視されるに至り、夜間申点竜をはじめ部落居住の民団派朝鮮人の家に「民団は警察のスパイだ」「民団幹部を追い出せ」等いやがらせの文言を記したビラを貼つたり或は投石する者さえあつたが、一方同月二十五日同部落広場において朝鮮人約二百名参集のもとに開催された朝鮮戦争二週年記念大会の席上、申点竜を呼び出し直接同人について犯罪者密告の件を糺明する動議が提出されるや、忽ち出席者の賛同を得て可決される等、部落一般にも申点竜糺弾の気運が張つて来た。

(被告人金鐘寿、同金鐘讃、同金乙連、同金鳳洙、同張翊相、同白南植に関する暴力行為等処罰に関する法律違反、不法監禁、及び強要等の訴因関係)

(イ)  (1) 前記の様な情況の下に、同月(即ち昭和二十七年六月)二十七日早朝同市民戦派幹部の一員である被告人金鐘寿は右申点竜を同市北港埋立地陳祥鳳方に呼び寄せ、同日午前七時頃出向いて来た申点竜を右陳方三畳の間に呼び入れた上、右被告人金鐘寿、同金鐘讃及び外数名が申点竜を取り巻く様に座を占め、続いて被告人金乙連、同白南植等も逐次現場に参集し被告人白南植は右三畳の間に座を占め同金乙連は右陳方裏口の土間に立ち、折柄同家及びその周辺に詰めかけた数十名の朝鮮人が蝟集している中で、右被告人金鐘寿、同金鐘讃、同金乙連、同白南植及び外数名は互に犯意を相通じ、右雰囲気を利用して、先ず被告人金鐘寿において右申点竜に対し犯罪密告の有無を詰問し、同人が之を否定して証拠を出せと応答するや、右被告人等及び外数名は交々同人に対し「嘘を言うな」「証拠があるから白状せよ」等と申し向けて自白を迫りその現場附近に群がつて事の成行を見守つていた朝鮮人等の口からも色々怒号罵声が乱れ飛ぶ中で、更に交々同人に対し「お前が電話したのじやないか白状せよ」「お前本当にして居て何で白状せぬか、俺には皆わかつとるぞ、俺は懲役の一年や二年は何ともない、白状せんならお前の家にロープをかけて皆で引き倒し海に抛り込んでしまうぞ」「皆行つて倒してしまえ」「大阪から三十円持つて来て困つていたとき金を貸してやつたため成功しているのに恩を知らぬ、あんな奴は殺せ」「あんな奴はバラバラにして肉を喰べてしまえ」等と申し向け、同人は何回か帰宅を申し出たけれども口々に「用が済まんと駄目だ」「お前が言わぬ裡は承知せん」「とにかく今後は気を附けると一筆書け、用が済まんと何時迄も帰れんじやないか」等と答えて之に応ぜず、因つて右気勢等に恐れを為した同人をして自由にその場を脱することができないようにし、結局同日午後二時頃被告人金鐘寿外数名が同人に附き添つて食事のために帰宅を許した間を除き同日午後三時頃まで同所において同人を取り囲んで繰り返し前回同様のことを申し向け、以て数人共同し且多衆の威力を示して同人を脅迫すると共に同人を監禁し、更に引き続き、同日午後三時頃から座を前同北港埋立地の申点竜方に移し、被告人金鐘寿、同金鐘讚、同白南植外数名が同家三畳の間において申点竜を取り囲み、被告人金乙連は同家裏口附近に立ち、尚被告人金鳳洙、同張翊相もその場に加わつて各々右三畳の間に座を占め、前同様陳方周辺から右申方周辺に移動して来た数十名の朝鮮人が蝟集している中で、右被告人金鐘寿、同金鐘讚、同白南植、同金乙連、同金鳳洙、同張翊相及び外数名は互に犯意を相通じ、前同様な雰囲気の下に、交々右申点竜に対し「お前の店に持つて来れば黙つて買うそうだが、持つて来んとすぐ電話で警察に泥棒を通知するのはどうしたわけか、お前がそんな悪いことばかりすると電話を外ずして了うぞ」「あるだけ言つて謝り、詫状を書け」「密告したりするなら北港に居れぬようにしてやる」「ええようにして紙一枚書いて皆に謝つたらどうか、そうせんと皆がおさまらん」等と申し向け、尚前同様右気勢等に恐れを為した同人をして自由にその場を脱することができないようにし、似て数人共同し且多衆の威力を示して同人を脅迫すると共に之を監禁し、さらに引き続いてかかる脅迫及び監禁の状態の裡に犯罪密告事実の自白及び之が謝罪を迫り、因つて畏怖した同人をして遂に同日午後五時頃同所において「今後はかような事のない様注意する」旨等を記載した書面を作成交付せしめ以て同人に義務なきことを行わせ、

(2) 尚被告人金鳳洙はこの間前記申点竜方に座を移して間もなく「何で白状せぬか」と怒鳴るやいきなり素手で右申点竜の顔面を数回殴打し以て同人に暴行を加えたものである。

(被告人陳祥鳳、同金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連に関する暴力行為等処罰に関する法律違反、不法監禁及び強要の訴因関係)

(ロ) 更に同日(即ち昭和二十七年六月二十七日)午後九時頃被告人陳祥鳳は、前記申点竜方に赴き、同人に対し昼間書いた書面に不備な点があり書き直さねばならぬから李珍雨方に来るよう申し向け、同人を同日午後九時半頃前同北港埋立地李珍雨方に呼び出して同家三畳の間に座らせ、被告人陳祥鳳、同金鐘寿は同人の間近に座を占め、被告人金鐘讚外数名は同家土間に同金乙連は同家出口附近に夫々之を取り囲む様に位置を占め、その他三、四十名の朝鮮人が同家出入口及び附近路上に詰めかけ蝟集している中で、右被告人陳祥鳳、同金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連及び外数名は互に犯意を相通じ、先ず被告人陳祥鳳において申点竜に対し同日昼間同人が作成交付した前記(即ち(イ)の(1) 末尾記載)の書面を示しつつ「お前が電話をかけたことは之で判るではないか、かけたことをはつきり言え」と詰問し、同人が之を否定して右書面を作成交付した理由につき種々弁解するや、被告人等は交々同人に対し「証人が居るから白状せよ、お前は大阪から来るとき三十円だけ持つて来たから、三十円だけ持つて部落から出て行け、電話も部落全体のものだから隣の大山方に附け替えろ」「そうだそうだ、平山は今晩中に出してしまえ、金は一銭でも持たせんでよい」等と申し向け、同日午後十時過頃若松市警察署員数名が情況調査のため右現場に立ち入ろうとするや、被告人陳祥右等はその場に居合せた朝鮮人群集と共にその前面或は周囲に立ち塞がつて之を妨害し因つてそのまま退去させ、又申点竜をして後難を恐れて右警察官に救出を求めることができないようにし、かくして同人の行動の自由を拘束した状態の下に、尚も同人に対して執拗に犯罪密告の事実を白状するかさもなければ北港部落から退去すべきことを迫り、被告人陳祥鳳が一定の猶予期間を置いて同人を部落から退去させることを提案するや、その余の被告人等及び群集は拍手を以て之を可決する等、数人共同し且多衆の威力を示して脅迫を続けると共に同人を監禁し、因つて畏怖した同人をして翌二十八日午前二時半頃に至り「七月一日迄に北港部落から退去する」の書面を作成交付せしめ以て同人に義務なきことを行わせたものである。

(被告人李起栄、同尹一模、同呉元錫、同張白樹、同李金水、同梁在義、同陳祥鳳、同金基昊、同鄭孟祚、同李零雨、同徐潤守、同金鐘讚、同金鐘寿、同金乙連、同鄭在湖、同金映昌に関する住居侵入暴力行為等処罰に関する法律違反及び傷害の訴因関係)

第二、前記の如く昭和二十七年五月二十七、八日の両日に亘り被告人金鐘寿或は同陳祥鳳等民戦派朝鮮人が主となり前記北港部落居住の民団若松支部顧問申点竜を糺弾の末同人に同年七月二日限り北港部落から退去すべき事を承諾させるとの報がその直後民団若松支部に達するや、之をめぐつて若松市における民団派の民戦派に対する感情は遽かに悪化し、同月二十九日に至り、同市の民団派は県下近接地区の応援を求めて民戦派朝鮮人の多数居住する前記北港埋立地朝鮮人部落の襲撃を策して居るとの嘘が弘まつたところから、同市の民戦派も之に備えて隣接各市の民戦派に応援を求めるかたわら、同日夕刻頃から右北港埋立地の朝鮮人部落内において竹槍棍棒類数十本及びビール瓶等に揮発油を詰めて瓶の技擲破損等により発火させる俗称火焔瓶若干等を製造準備し、被告人陳祥鳳、同張白樹、同鄭孟祚、同李零雨、同徐潤守、同金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連等若松市内居住の朝鮮人並びに被告人金基昊、同染在義、同李起栄、同李金水、同鄲在湖、同金晩昌等福岡市或は近郊各地より来援の朝鮮人合計約二百名は、何れも右北港埋立地に集結待機したのであるが、民団派来襲の気配が見えなかつたので、寧ろその機先を制し若松市老松町九丁目民団若松支部事務所附近に進出して民団側に攻撃を加えることを共謀し、同月三十日午前零時頃右埋立地徐潤守方前路上において隊伍を整え、被告人金基昊等の指揮の下に夫々前記竹槍棍棒類及び火焔瓶等を携え或は素手で同所を出発して右民団支部事務所にその二階を当ててある尹吉煥方前路上に大挙殺到し、尚被告人呉元錫、同尹一模も外三名と共に八幡市より来援して右現場で之に参加し前記被告人等と犯意を相通じた上、

(イ)  同日午前零時二十分頃右被告人等を含む集団の内約二十名の青壮年男子は右尹吉煥方表出入口等より故なく屋内に侵入し同日午前一時頃迄の間同家二階の民団若松支部事務所内を荒らし廻り、爾余の者等は右尹方前に蝟集して口々に「壊してしまえ」「やれやれ」「看板を外ずせ」「押せ押せ」等と叫び或は喚声をあげ、以て数人共同し且多衆の威力を示して、尹方玄関戸等の硝子六枚位を損壊し、或は右事務所備付の謄写器具一台書類箱及び本立各一個並びに同支部の木製看板一枚を夫々階上から道路上に投げ落して之を損壊し、更に同支部の書類等数点を路上において焼却して毀棄し、

(ロ)  同日午前零時三十分頃前同所附近の民団若松支部顧問安中範方前路上に殺到し、内六、七名の青壮年男子は同家表出入口等より故なく屋内に侵入し、同日午前一時頃迄の間竹槍等を揮つて屋内を荒らし廻わり、爾余の者等は同家の周囲を取り巻いて喚声をあげ或は竹槍等で同家外壁を突き刺し若しくは乱打し、以て数人共同し且多衆の威力を示して、同家窓硝子三十二枚障子戸二枚電燈器具二個外炊事場の板塀三坪位を各損壊し、或は居合せた同家長男安福寿(当時二十三歳)及び三女安田末子こと安末徳(当時十六歳)の両名に対して竹槍等で突き若しくは殴打し若しくは突き倒す等の暴行を加え、因つて右安末徳に対し全治二週間を要する左側下腿膝関節部刺傷二箇所右側下腿外側膝関節部擦過傷右側拇趾刺傷左側前膊外側関節部刺傷三箇所の傷害を負わせたものである。

(被告人金基昊、同李起栄、同張白樹に対する住居侵入暴力行為等処罰に関する法律違反放火未遂及び爆発物取締罰則違反の訴因関係)

第三、前記第二の犯行後之に參加した朝鮮人約二百名は一旦若松市高塔山の中腹に移動集結したのであるが、同所において、被告人金基昊等幹部は、一部青壮年男子の反対にも拘らず、数十名の青壮年男子と共謀の上さらに同市警察署土居町巡査部長派出所民団若松支部団長金応[王贊]方及び同支部幹部李弘洙方等を襲撃しようと企て、右共謀に基ずき右青壮年男子等は一班数十名宛の四班に別れ、各自竹槍棍棒前記火焔瓶及びラムネ瓶にカーバイトを詰め之に水を注入して投擲する俗称ラムネ弾等を携え、夫々手別けして、

(イ)  同日午前三時頃同市土居町四丁目所在土居町巡査部長派出所を襲い、治安を妨げる目的を以て同派出所事務室目がけて所携の右ラムネ弾二個位を投げ込み破裂させて之を使用し、又現に人の住居に使用する同派出所焼燬の目的を以て右火焔瓶二個位をも投げ込んで発火させ、且同時に同派出所出入口及び窓の硝子合計十六枚警察電話線一本をも破損損壊し、以て数人共同して器物を損壊し、尚右火焔瓶の発火燃焼により同派出所の押入二枚及び椅子のビロード覆い等を燃焼させたが、間もなく近隣の者が発見して消し止めたので同派出所焼燬の目的を遂げず、

(ロ)  同日午前三時過頃同市堺町三丁目金応[王贊]方を襲い、人の身体財産を妨げる目的を以て同家前路上から屋内めがけて所携の前記ラムネ弾七個位を投げつけ破裂させて(但し内一個が屋内に入りその余は表の壁に当つたのみ)之を使用し、且同時に同家の襖二枚窓硝子三枚を各破損損壊し、以て数人共同して器物を損壊し、

(ハ)  同日午前三時過頃同市浜七番町一丁目李弘洙方を襲い、内七、八名は同家表出入口より故なく屋内に侵入し、同人の妻李道子(当時二十六歳)に対して李弘洙の在否を問い、その不在なる旨の返答を受けるや、擅に屋内を探索して之を確認し、更に同女に向い「今度こうゆう事件があつたときは生かして置かぬ」「半分の国の者は殺すぞ」「これだけは親爺に言つて置け、今度来たときは民団から手を引いて居らぬと殺すぞ、今日は親爺が不在で運がよかつた、もし親爺が居れば家も何も彼もなくなつている」等と申し向け、その間爾余の者達は屋外において「殺せ」「ぶつ毀せ」等と怒号し、以て数人共同し且多衆の威力を示して同女を脅迫し、尚治安を妨げる目的を以て同家附近路上において所携の前記ラムネ弾二個位を破裂させ之を使用したものであつて、

被告人李起栄、同張白樹は右(ハ)の犯行に参加したが、何れもラムネ弾及び火焔瓶の性能及び使用についてはその認識がなく従つて犯意を欠いていたものである。

(被告人金基昊に関する器物毀棄の訴因関係)

第四、被告人金基昊は、鄰宗鉄と共謀の上、昭和二十七年三月二十八日午後十一時頃、福岡市幾世町の在日大韓民国居留民団福岡支部事務所(管理者崔泰山)前路上より、同事務所玄関硝子窓目掛けて人糞を詰めた硝子瓶二個を投付け、因つて同窓硝子二枚を損壊し、同事務所屋内のセメント床上一面に人糞を散乱させたものである。

(被告人金鐘讚に関する窃盗の訴因関係)

第五、被告人金鐘讃は

(イ)  辛一善、金銃寿、金正植等と共謀の上、昭和二十七年七月四日午前三時頃八幡市黒崎町小野田セメント株式会社八幡工場構内食堂から同工場勤労課長伯野俶一管理に係るスーパー九球拡声及びマイク増幅装置一組、マイクロフオン(電線三米附)一個、丸飯台一台(時価合計三万七千三百円相当)を、

(ロ)  辛一善と共謀の上、同月六日午前零時頃八幡市西八幡、八幡製鉄株式会社八幡製鉄所配給課原料掛、西八幡貯蔵場、吉川パイレン機械附近に於て山本関一の管理に係る真鍮屑十貫匁、鉄屑十三貫匁(時価合計八千二百八十円相当)を

各窃取したものである。

(被告人尹一模に関する傷害の訴因関係)

第六、被告人尹一模は、昭和二十八年九月二十八日午後六時過頃小野田市高泊縄地ケ鼻、尹支摸方に於て、金福順(二十四年)から素手で顔面を撲られた事に憤慨し、失庭に素手で同女の顔面を数回撲り返した上更にその首部及び腰部等を数回足蹴りして暴行を加え、因つて同女に対し約一週間の安静加療を要する全身打撲傷を負わせたものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(法令の適用) 被告人金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連、同金鳳洙、同張翊相、同白南植の判示第一の(イ)の(1) の所為中、

数人共同し且多衆の威力を示して申点竜を脅迫した点は暴力行為等処罰に関する法律(以下暴力行為等処罰法と略称)第一条第一項刑法第二百二十二条罰金等臨時措置法第二条第三条に、申点竜を不法に監禁した点は刑法第二百二十条第一項第十条に、

六申点竜に義務のないことを行わせた点は刑法第二百二十三条第一項第六十条に

各該当し、

被告人金鳳洙の同第一(イ)の(2) の暴行の点は刑法第二百八条罰金等臨時措置法第二条第三条に該当し、

被告人陳祥鳳、同金鐘寿、同金鐘讚、同金乙連の同第一の(ロ)の所為中

数人共同し且多衆の威力を示して申点竜を脅迫した点は暴力行為等処罰法第一条第一項刑法第二百二十二条罰金等臨時措置法第二条第三条に、

申点竜を不法に監禁した点は刑法第二百二十条第一項第六十条に、

申点竜に義務のないことを行わせた点は刑法第二百二十三条第一項第六十条に

各該当し、

被告人李起栄、同尹一模、同呉元錫、同張白樹、同李金水、同梁在義、同陳祥鳳、同金基昊、同鄭孟祚、同李霽雨、同徐潤守、同金鐘讚、同金鐘寿、同金乙連、同鄭在湖、同金晩昌の判示第二の(イ)(ロ)の所為中、

故なく(イ)尹吉煥方及び(ロ)安中範方に侵入した点は刑法第百三十条第六十条罰金等臨時措置法第二条第三条に、

数人共同し且多衆の威力を示して(イ)(ロ)の器物を損壊毀棄し或は(ロ)の暴行を為した点は暴力行為等処罰法第一条第一項刑法第二百六十一条第二百八条第六十条(被告人陳祥鳳、同金基昊、同梁在義等が各犯行現場に赴き実行行為を分担した事跡を認め難く、同人等に関する限り単なる共謀関係のみしか認められないので、特に本条を適用する)罰金等臨時措置法第二条第三条は、(ロ)の安末徳に傷害を負わせた点は刑法第二百四条第六十条罰金等臨時措置法第二条第三条に、

各該当し、

被告人金基昊、同李起栄、同張白樹の判示第三の(イ)(ロ)(ハ)の各所為中、

(イ)(ロ)の数人共同して器物を損壊毀棄した点及び(ハ)の数人共同し且多衆の威力を示して脅迫した点は暴力行為等処罰法第一条第一項刑法第二百六十一条第二百二十二条刑法第六十条(被告人金基昊については、前同様共謀関係のみしか認められないので、本条を適用する)罰金等臨時措置法第二条第三条に、

(ハ)の故なく李弘洙方に侵入した点は刑法第百三十条第六十条罰金等臨時措置法第二条第三条に、

(イ)の放火未遂の点(但し被告人金基昊についてのみ)は刑法第百八条第百十二条第六十条に、

(イ)(ロ)(ハ)の治安を妨げ又は人の身体財産を害する目的を以て爆発物を使用した点(但し被告人金基昊のみについては)爆発物取締罰則第一条刑法第六十条に、

各該当し、

被告人金基昊の判示第四の所為は、刑法第二百六十一条第六十条罰金等臨時措置法第二条第三条に該当し、

被告人金鐘讃の刑示第五の(一)(二)の各所為は刑法第二百三十五条第六十条に夫々該当し、

被告人尹一模の判示第六の所為は刑法第二百四条罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するところ、

判示第一の(イ)(ロ)の各所為中暴力行為等処罰法違反の点と不法監禁違反の点と不法監禁の点及び強要の点とは夫々一個の行為であつて数個の罪名に触れる場合に当るから、刑法第五十四条第一項前段第十条に則り何れも最も重い不法監禁罪の刑に従つて処断すべく、

刑示第二の(イ)(ロ)の各所為中各住居侵入の事実及び各暴力行為等処罰法違反の事実は何れも同一の共謀に基ずき且日時場所を相接して為されたものであるから、之を包括的に観察して夫々一個の行為と認め、而して右暴力行為等処罰法違反の点と(ロ)の傷害の点とは一個の行為であつて数個の罪名に触れる場合に当り、又右住居侵入の点と暴力行為等処罰法違反及び傷害の点とは手段結果の関係にあるから、結局刑法第五十四条第一項前段後段第十条に則り最も重い傷害罪の刑に従つて処断すべく、

判示第三の(イ)(ロ)(ハ)の各所為中各暴力行為等処罰法違反の事実及び各爆発物取締罰則違反の事実は何れも同一の共謀に基ずき且右共謀者間で夫々実行分担者を定め殆んど時を同じくして為されたものであるから、之を包括的に観察して夫々一個の行為と認め、而して何れも被告人金基昊に関する暴力行為等処罰法違反の点と爆発物取締規則違反の点とさらに(イ)の放火未遂の点とは一個の行為であつて数個の罪名に触れる場合に当り、又被告人金基昊、同李起栄、同張白樹に関する住居侵入の点と暴力行為等処罰法違反の点とは手段結果の関係にあるから、結局被告人金基昊については刑法第五十四条第一項前段後段第十条に則り最も重いと認められる爆発物取締罰則違反罪の刑に従い同李起栄、同張白樹については刑法第五十四条第一項後段第十条に則り重い暴力行為等処罰法違反の罪の刑に従つて夫々処断すべく、

被告人金基昊の前示第二、第三、第四の各罪は刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるから、何れも所定刑中有期懲役刑を選択した上、同法第四十七条本文第十条第十四条に則り最も重い第三の爆発物取締罰則違反の罪の刑に法定の加重を為し、尚本件爆発物の構造性能等に鑑み犯罪の情状憫諒すべきものがあると認められるので同法第六十六条第六十八条第三号に則り酌量滅軽を為し、右刑期範囲内で同被告人を懲役五年に処し、

被告人陳祥鳳の前示第一の(ロ)及び第二の各罪、並びに被告人金鐘寿、同金乙連の第一及び第二の各罪は、夫々刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるから、第二の傷害罪の所定刑中懲役刑を選択した上、同法第四十七条本文第十条に則り重い右傷害罪の刑に法の加重を為し、右刑期範囲内で被告人陳祥鳳を懲役四年に同金鐘寿を懲役二年六月に同金乙連を懲役一年六月に各処し、

被告人金鐘讃は(い)前示前科がある外(ろ)昭和二十七年六月十九日小倉簡易裁判所において窃盗罪に因り懲役一年に処せられ上告棄却により昭和二十八年四月三十日右判決が確定し、右(ろ)の前科にかかる罪と被告人の本件各犯行とは刑法第四十五条後段の併合罪の関係にあるので同法第五十条に則り本件の前示各罪につき更に刑を定めるべきところ、尚上記(い)の前科があるから、刑法第五十六条第五十七条に則り前示第一第二第五の各罪(第二の罪については所定刑中懲役選択)につき累犯加重を為し、尚以上は刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるから同法第四十七条本文第十条第十四条に則り最も重いと認められる第五の(二)の窃盗罪の刑に法定の加重を為し、右刑期範囲内で同被告人を懲役二年六月に処し、

被告人李起栄、同張白樹の前示第二第三の各罪は刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるから、何れも所定刑中懲役刑を選択した上、同法第四十七条本文及び但書第十条に則り重い第二の傷害罪の刑に法定の加重を為し、右刑期範囲内で被告人李起栄を懲役二年に同張白樹を懲役一年六月に各処し、

被告人尹一模の前示第二第六の各罪は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、何れも所定刑中懲役刑を選択した上同法第四十七条本文第十条に則り重い第二の傷害罪の刑に法定の加重を為し、右刑期範囲内で同被告人を懲役二年に処し、

被告人梁在義、同呉元錫、同鄭在湖、同金晩昌、同李金水、同鄭孟祚の前示第二の罪については、何れも所定刑中懲役刑を選択し、右刑期範囲内で被告人梁在義、同呉元錫、同鄭在湖、同金晩昌を各懲役二年に被告人李金水、同鄭孟祚を各懲役一年六月に処し、被告人李霽雨には前示前科があるから、刑法第五十五条第五十七条に則り前示第二の罪につき懲役刑を選択した上法定の加重を為し、右刑期範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、

被告人徐潤守は昭和二十七年六月二十三日福岡地方裁判所小倉支部において賍物故買罪に因り懲役八月(三年間執行猶予)及び罰金五千円に処せられ控訴上告したが上告棄却となつて昭和二十八年六月四日右判決が確定し、右前科にかかる罪と同人の前示第二の罪とは刑法第四十五条後段の併合罪の関係にあるから、同法第五十条に則り更に右第二の罪につき刑を定めるべく、所定刑中懲役刑を選択し、右刑期範囲内で同被告人を懲役一年に処し、

被告人金鳳洙の前示第一の(イ)の(1) (2) の各罪は刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるから、第一の(イ)の(2) の罪については所定刑中懲役刑を選択した上、同法第四十七条本文及び但書第十条に則り重い第一の(イ)の(1) の不法監禁罪の刑に法定の加重を為し、右刑期範囲内で同被告人を懲役十月に処し、

被告人張翊相については前示第一の(イ)の罪の刑期範囲内で同被告人を懲役十月に処し、

被告人白南植には前示前科があるから、刑法第五十六条第五十七条に則り前示第一の(イ)の罪の刑に法定の加重を為した刑期範囲内で同被告人を懲役十月に処し、

尚刑法第二十一条により主文掲記の如く原審の未決勾留日数を通算し、

但し被告人金鐘寿、同梁在義、同呉元錫、同尹一模、同李起栄、同鄭在湖、同金晩昌、同張白樹、同李金水、同金乙連、同鄭孟祚、同李霽雨、同張翊相、同金鳳洙に対しては、刑法第二十五条第一項を、被告人徐潤守に対しては同条第二項を各適用して、何れも本裁判確定の日から三年間各刑の執行を猶予し、且被告人徐潤守に対しては同法第二十五条の二により右猶予の期間中を保護観察に附することにする。

次に原審押収にかかる証拠物件、

竹槍三本(証第二号)棍棒二本(同第三号)竹槍三本(同第五号)は判示第二掲記の被告人等及び共犯者等がその犯行の用に供し又は供せんとした物件であり、

竹槍一本(証第六号)木棒一本(同第七号)ビール瓶破片約二本分(同第八号)ラムネ瓶破片約二本分(同第九号)ラムネ瓶破片五個(同第十二号)ラムネ瓶破片若干(同第十三号)ラムネ瓶破片五十三個(同第十四号)は判示第三の被告人等(但し被告人李起栄、同張白樹については右第八号第九号第十二号乃至第十四号の各物件を除く)及び共犯者等がその犯行の用に供し又は供せんとした物件であり、

何れも犯人以外の者に属しないと認められるから、刑法第十九条第一項第二号第二項に則り、各之を没収することにする。

又原審及び当審における訴訟費用については、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文(尚連帯の分については同法第百八十二条)に則り、夫々主文掲記のとおり負担せしめるべきものである。

(無罪の判断)

本件公訴事実中

被告人陳祥鳳が判示第一の(イ)の(1) の各犯行に関与したとの点(即ち同人に対する昭和二十七年十月十一日附起訴状記載の第一の事実)については、被害者申点竜その他関係人の各供述によつても、同被告人が現場に臨んで右犯行を分担した様な形跡は全くなく、又共同被告人金鐘寿の検察官に対する第二回供述調書(記録第五十五冊)中第二項「前日午後十時頃阜東(即ち陳祥鳳)方に行つたところ、……阜東が奥の間の洋服ダンスの前に座つて何か話していたので、同人を玄関に呼び出し私が、"いので、結局同被告人の前示犯行に関してはその証拠がないものと言うべく、又被告人白南植が判示第一の(ロ)の犯行に関与したとの点(即ち同人に対する起訴状記載の第二の事実)については、之を確認させるに足る証拠がなく、従つて同被告人の右犯行に関してもその証明がないものと言うべく、

さらに、被告人梁在義、同李金水、同鄭在湖、同金晩昌が判示第三の犯行に関与したとの点(即ち同人等に対する各起訴状記載の第二の(一)(二)(三)の各事実)についても、之を確認させるに足る十分な証拠がなく、従つて同被告人等の右犯行についても亦その証明がないことになるので、

何れも刑事訴訟法第三百三十六条に則り、右被告人陳祥鳳、同白南植、同梁在義、同李金水、同鄭在湖、同金晩昌の右犯行については無罪の言渡を為すべきものである。

尚被告人李起栄、同張白樹が判示第三の犯行に際し他の青壮年男子等に伴いて犯行現場に赴きその行動を共にしたことは認められるが、判示ラムネ弾及び火焔瓶の性能及び使用の点については全くその認識がなく従つて犯意を欠いていたものと認めるのが相当であるから、この点に関する限り犯罪の証明がないことになるところ、右は判示第三の暴力行為等処罰に関する法律違反の点と一個の行為を為すものとして起訴されたものと認められるので、特にこの点に関し主文において無罪の言渡はしないことにする。

以上の様な次第であるから、主文の様に判決する。

(裁判長裁判官 高原太郎 裁判官 大曲壮次郎 裁判官 吉田信孝)

検察官の控訴趣意

第一原判決には明かに判決に影響を及ぼすべき法令の解釈を誤つた違法がある。即ち原判決は本件公訴にかかる「被告人等は金麟均外数十名の青壮年の者と共謀の上民団若松支部長金応讚方同支部顧問李弘洙方及び若松市警察署土居町巡査部長派出所等を襲撃しようと企図し一班二十名位宛の四班に班別した上夫々手分け(一)先づ昭和二十七年六月三十日午前三時頃右土居町巡査部長派出所を襲い治安を妨げ又放火の目的を以てカーバイトを以て製造した俗にラムネ弾と称する爆発物三個位と硫酸ガソリン等を以て製造した俗に火炎びんと称する爆発物三個位を同派出所内に投込み使用して出入口及び窓の硝子合計十六枚と警察電話線一本を破損損壊し尚火炎びんの爆発燃焼により現に人の住居に使用する同派出所の押入等に燃え移らせ押入れの戸二枚及び椅子のビロード覆い等を焼毀したが近隣の佐伯末彦夫婦等において間もなく発見消し止めたので放火の目的を遂げるに至らなかつた。(二)同日午前三時過頃同市堺町三丁目右金応讃方を襲い同家表道路において治安を妨げ人の身体財産を害する目的を以て前記ラムネ弾七個位を屋内に投込んで使用しその為同家の襖二枚窓硝子三枚及玄関戸硝子六枚を損壊し、(三)同時刻頃同市浜七番町一丁目開の右李弘洙方を襲い内七、八名は故なく同家屋内に侵入し同人の妻道子当二十六年に対し多衆の威力を示して「主人が民団から手を引かぬと容赦せぬ、今度来る時迄やめておかぬと殺してしまうぞ」と申向けて脅迫した上同家前において治安を妨げる目的を以て前記ラムネ爆弾三個を投げつけて使用したものである。」との事実中ラムネ弾使用に対する爆発物取締罰則違反の点につき「本件公訴事実中治安を妨げ人の身体財産を害する目的で俗にラムネ弾(なお火焔びんの点を言及しているが以下この部分は省略する)と称する物件を使用したとの点が爆発物取締罰則第一条違反の罪を構成するか否かについて按ずるに右罰則に所謂「爆発物」とはもとより一個の法律的概念であつて是は理化学上の爆発物なる概念を基礎としそれに一定の法律的評価を加える事によつて成立しているものであるから先づ理化学上概念としての「爆発」竝に爆発物とは如何なる現象竝に物件を指称するかについて考察するに鑑定人谷巌作成の鑑定書、倉田明に対する爆発物取締罰則違反被告事件の第七回公判調書(謄本)中証人二神哲五郎の供述記載部分同人作成の鑑定書(謄本)金昌変外一名に対する放火未遂等被告事件公判記録中裁判所の鑑定人塚本久雄に対する尋問調書(謄本)同人作成の鑑定書(謄本)山本祐徳作成の後藤昭三に対する爆発物取締罰則違反被告事件に関する鑑定書(謄本)の各記載を綜合すれば理化学上の爆発という概念には広狭二義があり広義に於ては「或る物体系の体積が急激迅速に増大する現象」を狭義に於ては「或る物質の分解又は化合が極めて急速に進行し一時に多量の熱と瓦斯を発生しその体積が急激迅速に増大する現象」を指称しかかる現象を惹起する性能を備えた物件を「爆発物」と指称するのであつて広狭二義の相違は後者が常に化学反応を伴う体積急増の場合(以下化学的爆発と称する)のみを指称するに対し前者は化学的反応を伴わぬ単なる物理的な体積急増の場合(以下物理的爆発と称する)をも包含指称する点に存するが結局理化学上の「爆発」という概念の構成要素は「或物体系の体積急増」という点に存すると解せられるから一般的に物件の爆発性能の有無を論ずるに際しても広義の「爆発」という概念を基準とするのを相当と認める、しからば本件犯行に使用された俗にラムネ弾と称する物件が理化学上の爆発性能を有するか否かにつき考察するのに押収に係るラムネ瓶(証第四号)及びラムネ瓶破片(証第九号第十二号第十三号第十四号)及び鑑定人谷巌作成の鑑定書、前記倉田明に対する爆発物取締罰則違反被告事件の第七回公判調書(謄本)中証人二神哲五郎の供述記載部分同人作成の鑑定書謄本金昌変外一名に対する放火末遂等被告事件公判記録中裁判所の鑑定人塚本久雄に対する尋問調書並に同人作成の鑑定書の各謄本、山本祐徳作成の尹正根外三名に対する爆発物取締罰則違反被疑事件に関する鑑定書謄本の各記載を綜合すれば当裁判所が証第四号を以て押収に係るラムネ瓶中にはカーバイト三十四瓦位が詰められて居り又証第九号第十二号乃至第十四号を以て押収に係るラムネ瓶破片の内側には水酸化カルシウムが附着している事が認められるから前示犯行に使用された俗称ラムネ弾はすべてラムネ瓶にカーバイトを詰め之を水に注入するという構造を有していることが推認せられ一般に之を使用するには右ラムネ瓶中に水を数十瓦注入し少し瓶を傾けて投ずるという方法によるのであるが此の際に認められる現象はカーバイト、水の反応により急激且多量にアセチレンガスが発生し且つその反応により右ガスが膨脹し一方アセチレンガスの噴出によりラムネ瓶の口栓となるラムネ玉が瓶の口を密閉する為瓶内のガス圧が急速に高まり遂に瓶の外壁を破つて急激にその体積を増大するに至る為その破片が飛散するという物理的現象であつて右ラムネ瓶の破裂はアセチレンガスが密栓された瓶内で急速多量に発生する為高圧が生じそれが瓶の耐圧限界を超えるに至つた時発生する物理的作用に基くものである事が認められるから本件ラムネ弾は理化学上物理的爆発現象を惹起する性能を有する物体であると認定すべきものである。

然らば右に認定したような理化学上の爆発性能を有する本件ラムネ弾が果して爆発物取締罰則に所謂「爆発物」に該当するや否やについて判断することとしその前提として右罰則に所謂「爆発物」とは如何なる物件を指称するかについて考察するに爆発物取締罰則の規定自身に徴すればその目的とするところは治安を妨げ又は人の身体財産を害せんとする目的を以て爆発物を使用した者及び人をして使用せしめた者其の他かかる目的による爆発物の使用という事態を惹起する虞のある一切の行為を処罰するに在るものと認められ、法定刑も爆発物使用者にあつては使用に係る爆発物の爆発如何を問わず死刑、無期若しくは七年以上の懲役又は禁錮刑に処せられるべき其の他の者に対しても著しく重刑を以て臨んでいるのであつて刑法に定める類似の犯罪に対する刑罰(刑法第百十七条)に比して重い刑が科せられている点を比較考慮すれば同法に所謂「爆発物」とは極めて高度の爆発性能を有し爆発自体による直接の効果として社会公共の平和を攪乱し、又は不特定多数人の身体財産に対し、甚大な被害を与えるに足る能力「以下之を威力と称する」を有すると認めらるべき物件のみを指称し同じく爆発性能を有していてもそれが右の程度に達しないと認められる物件は同法に所謂「爆発物」には該当しないと解するのが相当である。

よつて本件ラムネ弾の威力について考察するのに押収に係るラムネ瓶(カーバイト入)(証第四号)鑑定人谷巌作成の鑑定書、塚本久雄作成の鑑定書謄本、倉田明に対する爆発物取締罰則違反被告事件の第七回公判調書謄本中証人二神哲五郎の供述記載、同人作成の鑑定書謄本の各記載を綜合すれば本件ラムネ弾(カーバイト約三十四瓦が詰めてあるもの)に水を約五十乃至六十瓦注入して爆発させた場合その破片は最大五十数米位迄飛散するが、大多数の破片は爆心より半径十数米の範囲内に飛散落下することが認められその際発する音響も中心より半径数十米の範囲内にある者を驚かす程度であり発生する爆風もラムネ瓶の耐圧限界が大体二十気圧を出ず従つてアセチレンガスの体積の急激な増大と言つても約二十倍程度であつてさしたる威力を示さず更にラムネ弾の破片が有する損傷能力は至近距離にあつては窓硝子を破損し布類や革皮の様なものは貫通するが木材鉛板の様なものは深さ数粍程度の損傷を与えるのみであり爆心より距離一米附近にあつては厚さ三分の杉板を貫通するに至らず距離三米附近にあつては厚さ二粍のボール紙を破る程度、板などに対しては破片が喰い込む程度で之を破壊する力はないが唯硝子の如きものは破損する事が認められ、又人体に対しても距離一米以内であれば通常露出せる皮膚に深さ数粍の切傷又は皮膚が切れる程度の打撲傷を与え、衣服に対しては之を刃物で切つた様に切り裂き、しからざる場合にも衣服下の皮膚に血の滲む程度の打撲傷を与える事が推認せられる。以上の諸点を綜合すれば本件犯行に使用されたラムネ弾の威力は専ら破片の飛散に於て発揮せられるものであるが、その直接的効果は有効に破裂した場合でも爆心より数米の範囲内で前敍の程度の威力を有するのみでありそれを超えて遠距離に至れば破壊能力は著しく低下するものであると認められるからその威力は末だ以て社会公共の平和を攪乱し人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足る破壊力を有するものと認められず従つて本件ラムネ弾は爆発物取締罰則に所謂爆発物に該当しないものと言わねばならない」と判示し、要するに爆発物取締罰則に所謂爆発物とは物理的たると化学的たるとを問わず或は物体系の体積急増の現象を惹起する性能即ち爆発性能を有する物件中極めて高度の爆発性能を有し爆発自体による直接の効果として社会公共の平和を攪乱し、又は不特定多数人の身体財産に対し甚大なる被害を与えるに足る能力を有すると認めらるべき物件のみを指称し本件ラムネ弾は理化学上爆発性能を有する物件であるがその性能は右の程度に達しないと認められるので爆発物取締罰則にいう爆発物に該当しないというのである。

(一)然しながら爆発物の定義につき大正七年五月二十四日大審院第一刑事部及び同年六月五日同院第三刑事部は爆発物取締罰則に所謂爆発物とは化学的其の他の原因に依りて急激なる燃焼爆発の作用を惹起し以て公共の平和を攪乱し、又は人の身体財産を傷害損壊し得べき薬品其の他の資料を調和配合して製出せる固形物若くは液体を指称するものとす」となし、爆発作用に依り公共の平和を攪乱し又は人の身体財産を傷害損壊し得る能力あるを以て足るとするのであつて、原判決の言うが如く「極めて高度の爆発性能を有し爆発自体による直接の効果として社会公共の平和を攪乱し不特定多数人の身体財産に対し甚大なる被害を与えるに足る能力を有すると認めらるべきもの」即ち極めて高度の爆発性能或は被害の甚大性を要件としてはいないのである。

(二)原判決が右の如く爆発物につき制限的解釈をする理由は、判示明確を欠くが主として爆発物取締罰則の法定刑が刑法に規定する類似犯罪の法定刑に比較して極めて重い点にあるものと解せられる。なるほど同罰則の法定刑が刑法規定の類似犯罪(刑法第百十七条第百三条第百四条第百十三条第二百一条等)に対する刑罰より稍重いことは明かである。しかしながら両者の法定刑の軽重を以て爆発物につき右の如き制限的解釈を施すことは誠に理由なき皮相の試みであると解せざるを得ない。蓋し右刑法の各規定は犯罪成立の主観的要件として事実の認識(犯意)のみを以て充分としているのに反し爆発物取締罰則第一条乃至第四条は犯罪成立の主観的要件として事実の認識(犯意)の外「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的」を必要とし第五条第八条及び第九条は「第一条ニ記載シタル犯罪者ノ為メ」「第一条乃至第五条ノ犯罪アルコトヲ認知シタル時ハ」及び「第一条乃至第五条ノ犯罪ヲ」とそれぞれ規定し、何れも「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的」を有する犯罪者又は犯罪に関する規定であることが明白であつて、同罰則の法定刑が刑法の類似犯罪の規定に比して重いのは実に同罰則の犯罪において主観的要件として事実の認識の外に右の如く治安を妨げ又は人の身体財産を害せんとする目的のあることを必要とし且つ使用物件が爆発物なる特殊の物品であるが故である。この故に同罰則第六条は爆発物を製造輸入所持し又は注文した者につき右目的の立証なき場合は同罰則第三条の法定刑を二分の一以下に軽減しているのである、このことは明治十七年十二月十一日参事院上申の爆発物取締罰則説明に「本則に於て最も悪しと痛く禁遏を加えんとするの主眼は爆発物を使用するの目的と其使用する物品とに在り故に苟も他に危害を与へんと欲して爆発物を使用するものは其の治安を妨ぐると人の身体財産を害するとを問はず、之を同一の刑に処す他なし、其の危害をなすの大小軽重にあらずして爆発物を使用するの目的と又其の使用したる物品の爆発物たるを悪みてなり」と解説していることに徴するも明かであつて法定の刑の重いことを以て前記の如く制限的解釈となすは本末顛倒の議論と言わなければならない。

(三)そもそも刑罰法令については特に罪刑法定主義の要請により、法律の安定性を害するが如き解釈は慎まねばならない。しかるに原判決は本件ラムネ弾を爆発物であると一応認定しながら同罰則の刑罰が重いことを理由として同罰則の爆発物は爆発物中極めて高度の爆発性能を有し被害の甚大なものに限定したのであるがかかる概念により爆発物の範囲を制限することを許容することは法律解釈の専擅を招き延いて法律の安定性を害することは明かであるしかも同罰則の法定刑が重刑であるが故にこそ一入かかる不明確な概念を許容してその適用を不明確にすることは許さるべきでないのである。

第二原判決には事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである。

一、原判決は本件ラムネ弾の爆発力につき前記判示の如く鑑定人谷巌作成の鑑定書、塚本久雄作成の鑑定書謄本、倉田明に対する爆発物取締罰則違反被告事件の第七回公判調書謄本中証人二神哲五郎の供述記載、同人作成の鑑定書謄本の各記載を綜合すれば、本件ラムネ弾(カーバイト約三十四瓦が詰めてあるもの)に水を約五十乃至六十瓦注入して爆発させた場合その破片は最大五十数米位迄飛散するが、大多数の破片は爆心より半径十数米の範囲内に飛散落下することが認められ、その際発する音響も中心より半径数十米の範囲内にある者を驚かす程度であり、発生する爆風もラムネ弾の対圧限界が大体二十気圧を出ず、従つてアセチレンガスの体積の急激な増大と言つても約二十倍程度であつてさしたる威力を示さず、更にラムネ弾の破片が有する損傷能力は至近距離にあつては窓硝子を破損し、布類や革皮の様なものは貫通するが木材鉛板の様なものには深さ数粍程度の損傷を与えるのみであり、爆心より距離一米附近にあつては厚さ三分の杉板を貫通するに至らず、距離三米附近にあつては厚さ二粍のボール紙を破る程度、板などに対しては破片が喰込む程度で之を破壊する力はないが、唯硝子の如きものは破損することが認められ、又人体に対しても距離一米以内であれば通常露出せる皮膚に深さ数粍の切傷又は皮膚が切れる程度の打撲傷を与え、衣服に対しては之を刃物で切つた様に切り裂きしからざる場合にも衣服下の皮膚に血の滲む程度の打撲傷を与えることが推認される。となし、要するにラムネ弾の威力は専ら破片の飛散に於て発揮せられるものであるがその直接的効果は有効に破裂した場合でも爆心より数米の範囲内で前敍の威力を有するのみであり、それを超えて遠距離に至れば破壊能力は著しく低下するものである、と認められるからその威力は未だ以て社会公共の平和を攪乱し人の身体財産に対し甚大な被害を与えるに足る破壊力を有するものとは認められないとなした。二、然しながら、(一)鑑定人谷巌作成の前記鑑定書の記載を検討するに、本件ラムネ弾の身体に対する損傷能力は爆心より一米以内であれば露出の皮膚には相当の被害が予想せられ、即ち眼は失明し又けい動脈等の切断で生命の危険も考えられる、急所即ち動脈切断が行われなくても、不潔なガラスによる不規則な切創であれば病源菌の感染も予想せられるから今日の医療状態ではこれが生命にふれることもあり得ることが明かである。(二)鑑定人塚本久雄作成の前記鑑定書の記載を検討するに、カーバイト二十瓦及び三十瓦に水六十立方糎を注入したラムネ弾の爆破時間及び破片数は(破片数三糎以上のものを大、一糎を超え三糎未満のものを中、一糎以下のものを小とする)

カーバイト量

爆破時間(秒)

破片数

二〇瓦

一七

大約二六

中約三〇

小約一二〇

総数 一七六

三〇瓦

一〇

大約二三

中約二四

小約一三〇

総数 一七七

であつて、カーバイト十五瓦、二十瓦及び三十瓦を詰めたラムネ弾の破片の飛散距離は

水四十立方糎を注入した場合

カーバイト量

一米以内

一米より

二米の間

二米より

三米の間

三米より

五米の間

五米より

一〇米の間

一〇米以上

最大飛散距離

一五瓦

大部分

三五・〇〇

二〇瓦

大部分

三三・六五

三〇瓦

大部分

五一・二〇

水六十立方糎を注入した場合

カーバイト量

一米以内

一米より

二米の間

二米より

三米の間

三米より

五米の間

五米より

一〇米の間

一〇米以上

最大飛散距離

一五瓦

大部分

三四・七〇

二〇瓦

大部分

三六・〇〇

三〇瓦

一四

大部分

五八・〇〇

なることが明かであり、本件ラムネ弾は数秒で爆発し、その威力はラムネ弾中最大威力を有すると考えられ、爆心より半径五米内外においては人体傷害の危険あり、五米以上の距離においても必ずしも安全は保し得ないことを認めることができる。(三)前記証人二神哲五郎の第七回公判における供述及び同人作成の鑑定書の記載を検討するに、ラムネ弾(市販のカーバイト十八瓦を詰め水三十立方糎を注入したもの)から約十糎の距離に窓硝子、サラシ木綿、革皮、鉛板、木材を置いて爆発せしめた場合、その威力は窓ガラスはめちやめちやに破損し、サラシ木綿は所々に切つたように口が開き多くはラムネ瓶の破片が通過した形跡を示し、革皮も切れて破片が通過し、鉛板には深さ約二分の一ミリ程度に破片が突きささり、木材も所々に深さ約二分の一ミリの損傷を受け、更に偶々実験中約五米の距離に居た実験補助者の足にガラスの破片が当り、割れ口ではない所が当つたと想像されるにもかかわらず洋服及び靴下を通して足に皮下出血を起し、且つ瓶の破片は眼鏡の玉約四分の一大のものが、二十五米飛散し、五米乃至十米の個所に於ては人体に傷害を与えるものであることが明白である。また、右ラムネ弾を壁の厚さ四、五糎、底の厚さ五糎、内径五十糎のコンクリート製用水桶に深さ五十糎まで水を入れ、その中に鰌十五匹を入れて爆発せしめた場合、用水桶は側が三個に底は放射状に七個に破壊せられ、鰌は十五匹中二匹は即死、五匹は五時間以内に死亡した事実が明らかである。(四)更に、その爆音についても前記二神哲五郎の鑑定書の記載によれば、屋外では五、六十米以内、屋内では三十米以内に居る人を驚かしむるに足ることができる、右爆音の鑑定は鑑定書の全記載に徴し昼間行われたものと推定されるから本件犯行の如く深夜における爆音が人を驚愕せしむる程度は更に強度のものであることを推認し得るところである。三、以上の事実を綜合すれば本件ラムネ弾はその爆発により多数のガラス破片を四囲に飛散せしめ、これにより一時に多数の人の身体財産を損傷する威力を有し、その爆音また相当遠距離の人をも驚愕せしむるに足るものであることが明白であつて、且つ、ラムネ弾が火焔瓶と共に一昨年五月一日のメーデー事件を頂点として全国的に一部過激分子により悪用せられ、著しく社会不安を醸成した事実を想到すればラムネ弾の威力はまさに「社会公共の平和を撹乱し人の身体財産に甚大なる被害を与えるに足る破壊力」を有するものと言うべく原判決は明かに証拠の取捨選択を誤りラムネ弾の威力に関する事実を誤認したものと言わねばならない。

第三原判決は量刑が不当である。原判決は右の如く法令の解釈を誤り且つ事実を誤認した結果、ラムネ弾は爆発物取締罰則に所謂爆発物に該当しないとなし被告人等に対する同罰則違反の公訴事実を認めず、結局、被告人金基昊を懲役七年に、同梁在義を同五年に、同李起栄、同張白樹、同李金水、同鄭在湖、同金晩昌を各懲役三年執行猶予三年に夫々処する旨の言渡を為したのは量刑著しく不当であると謂はねばならない。

以上の理由により原判決を破棄し相当の裁判あらんことを求める。尚左記事実の取調を請求する。1、本件ラムネ弾と同種のラムネ弾の爆発力の鑑定。2、同ラムネ弾の爆発状況の検証。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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